ライターブログトップへ

ちょっと元気がないそこのあなたにぜひ見てほしい 「福岡道雄 つくらない彫刻家」展@国立国際美術館

ちょっと元気がないそこのあなたにぜひ見てほしい 「福岡道雄 つくらない彫刻家」展@国立国際美術館

福岡道雄は大阪に生まれ、いまなお大阪で活躍する現役の“つくらない”彫刻家として知られています。

“つくらない”?

“つくらない”のに彫刻家?

どういうことなのでしょうか?なんか哲学っぽい感じがしますよね。

 

今回のブログは、私なりに理解した、福岡道雄の“つくらない”という態度が意味するところを、お話したいと思います。

※以下にご紹介する作品は全て展示会場でご覧いただけます。

福岡道雄の作品を見てみると、初期(1950年代)の《SAND》や、《奇蹟の庭》からは、現代の芸術家が直面する、「世の中をあっと言わせるような、新しい作品をつくらなきゃ!」というような彫刻家としての野心が垣間見えます。

この《SAND》は、砂に手を突っ込んでできた穴の中に石膏を流し込んで作られた作品で、《奇蹟の庭》は彫刻の垂直性(説明必要)に抗いつつも、台座という制度的な装置枠組みから逃れようとする作品です。どちらも我々が一般的に想像する彫刻作品とは一線を画す作品だと言えます。

 

しかしその後、福岡はその彫刻家としての野心を少しづつ変化させていきます。《何もすることがない》という作品や、以下に紹介する《ピンクバルーン》という作品の制作によって、日々の生活と“つくる”ということとのつながりを模索するようになります。

こちらは、福岡道雄《ピンクバルーン》(1967年、1968年、1967-68年(1994年再生型))。

 

そして1970年代~1990年代まで制作された《風景彫刻》という作品群では、まるで小学生が日記を書くように、福岡は日常生活と“つくる”ことを融合させ、「誰かにとっての」作品を「自分にとっての」作品へと変化させているような印象を受けます。

つづく1990年代後半には、福岡の心情を吐露しまくった《文字》という作品群を制作。タイトルには〈何をしていいのか分からない〉〈私達は本当に怯えなくてもいいのでしょうか〉というような、一見ネガティブな言葉が並びます。

しかしそこに希望がないわけではありません。

FRP(繊維強化プラスチック)という素材に、ひたすら同じ言葉を書き並べているこの大きな作品たちは、一見したところ、まるで福岡が何かに憑りつかれているかのようです。

しかし、よーく見てみると、同じ言葉を繰り返す中に、すっと埋め込むようにして日々の生活をつづっていることがわかります。

そこからは日々の生活の中にちょっとした楽しみを見つけている福岡の姿が垣間見えるのです。

福岡は〈何もすることがない〉という作品タイトルからもわかるように、彫刻家としての野心に燃えた仕事が思うように進まない状況を真摯に受け止めながらも、同じ言葉をくりかえし書き進めていくことで実質的に“つくる”作業を進めていきます。

 

2005年に福岡は《腐ったきんたま》という作品を制作し、自ら「つくらない彫刻家」になることを断言しますが、これは《文字》という作品群からもうかがえるように、作品制作をやめるということではありません

自分は彫刻家的野心とは決別するということ、つまり世の中に一石を投じるような彫刻はもう作らない、ということを表明しているのです。

 

以上、福岡のこれまでの歩みを簡単にふりかえってみました。

福岡道雄は、彫刻家としてデビューしたての頃はおそらく、アート界の動向に惑わされまいとしながらも、やはり動向に気をもみ、高尚な芸術に抗いたいと、彫刻家としての野心に燃えていたのだと思います。

しかし晩年にはその気持ちも薄れ、制作だけに重きを置く生活から一変し、生活をしながら作品を制作している自分自身に直面し、アートという業界で自分がきちんと抗えているのかを不安に感じているような気さえします。

 

福岡道雄の作品をもとに、福岡道雄という人物をとらえてみると、ひとりの彫刻家が芸術という枠組みの中でもがき、悩んで日々を送っている様を垣間見ることができ、そこに自分の悩みを重ねてみると少し慰められるような、そんな気がしませんか。

 

不器用ながら懸命に生きていく福岡道雄の、一歩ずつ、ゆっくりと歩みを進めていく様子をぜひ会場でご体感ください。

 

♦展覧会情報♦

「福岡道雄 つくらない彫刻家」展

会期:2017年10月28日(土)~12月24日(日)

会場:国立国際美術館 地下三階展示室

休館日:月曜日

観覧料:一般 900円、大学生 500円

展覧会詳細はこちらをクリック

 

カテゴリー: +キッズ, +展覧会, +街角   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク
この記事を書いているのは
たねもー

たねもー

大学院で美術関連の研究をしていました。絵画や美術館、歴史、文学などいろんなことに興味があります。わかりやすいアートの解説や、行ってみたくなる美術館の紹介など、アートを広める活動に尽力しています。

コメントは受け付けていません。