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秋の京都は「国宝の杜」へ。ついに始まりました『国宝展』@京都国立博物館

秋の京都は「国宝の杜」へ。ついに始まりました『国宝展』@京都国立博物館

『国宝展』のオープニングの前数日、私少し緊張気味で、まるで遠足を前にした子供の様です。

表題の「国宝の杜」は、佐々木丞平京都国立博物館館長が国宝展の図録に使われていた言葉です。なるほど、そうなのです。あらためて、あぁ~出陳品全部国宝なんだと・・・凄い!何故?今?京博で国宝展なのか?は、春の記者発表時の拙ブログと重複しますので、詳しくはそちらをお読みください。

最終的な出品数は210件です。国宝1108(平成299)、内「美術工芸品」885件、ほぼ美術工芸品の1/4が展示されます。12ジャンル(考古、彫刻、絵画(仏画、絵巻物、肖像画、中世絵画、近世絵画、中国絵画)、書跡、染織、金工、漆工、陶器)が、それぞれテーマを設け、縄文から近世までを国宝で概観します。日本を支えた「美」とはどのようなものであったのかを知る一端になるのではないかと。私たちのDNAに組み込まれた美意識かもしれません。

「国宝」ばかりの展示は「研究員泣かせ」でもあるらしいのですが、私もご紹介したい作品は、あれもこれもとなりましたが、第Ⅰ期の展示室ごとに私のお気に入りでご紹介したいと思います。掲載写真は主催者の許可を得て撮影したものです。


【書跡】「筆跡に宿る、先人たちの「魂」

平常展では、1Fだった書跡から今回は始まります。厳かに静かに土佐日記 藤原為家筆 一帖 鎌倉時代 嘉禎2(1236) 大阪青山歴史文学博物館》誰もが知る「土佐日記」を定家の息子為家が今は失われた紀貫之の自筆本を一字も間違うことなく書写したもので、手にのる手帖ほどの大きさに愛おしくさえ感じました。

美しい料紙に流麗な文字、読めなくてもその美しさにうっとりします。《古今和歌集 第十七残巻(曼殊院本)京都・曼殊院》《古今和歌集 第十二残巻(本阿弥切本)京都国立博物館》

【考古】地中から語りかける日本の始まり

《土偶 縄文のビーナス縄文の女神仮面の女 1 縄文時代 茅野市尖石縄文考古館保管、山形県立博物館保管、茅野市尖石縄文考古館保管 縄文の三美神が独立ケースに立ち360度から拝見。祈りの対象の「土偶」デフォルメが活きた造形の素晴らしさに心がぎゅっと来ます。後ろ姿も愛らしくて、(´ε`;)ウーン… 現代造形作家も脱帽深鉢形土器(火焔型土器)No.1 縄文時代 十日町市博物館保管》

【仏画】これがわかれば美の免許皆伝

図録によれば、平安時代中・後期の仏画は「藤原仏画」と言われ、格別の存在で国宝の指定が集中しているそうです。廃仏毀釈の嵐が去れば、近代の数寄者の垂涎の的となったそうで、魯山人の云う「美術道楽の終局」だそうです。勿論、一方で信仰の対象であり、当時の美の理想像であり、形容は「美麗」。2階に降りてきて最初のお部屋で目にするのはお厨子に入った吉祥天像 一幀 奈良時代 8世紀 奈良・薬師寺》ふっくらしたお顔から「光明皇后を写した」との説も納得の天平美人像かと。ところが解説を読むと、薬師寺で宝2(771)罪障を懺悔し鎮護国家を願う法会「吉祥悔過会」(きちじょうけかえ)が創始されたときの本尊画の可能性が高く、「罪障観」は、この時期に始まる地獄観と表裏をなすとあり、平安時代への浄土信仰に繋がっていきます。お厨子も綺麗だと思っていましたところ、益田鈍翁によって大正9(1920)の寄進だそうで、一昔前のお金持ちは太っ腹です。

清浄な白さが際立つ普賢菩薩像 一幅 平安時代 12世紀 東京国立博物館》戦後、絵画の国宝指定第一号です。廃仏毀釈時には、海外へ売り飛ばされる危機にもあった歴史を美しい姿の中に抱え込んでおられるらしい。象の頭の上の“三人化”や施された截金文様にもご注目を。

【六道と地獄】平安時代の終活?

先の仏画の部屋の《阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎) 知恩院》とこの展示室の《六道絵 滋賀・聖衆来迎寺》や《地獄草紙》は、奈良博の『源信展』でこの夏にお目にかかったものが多い。源信展 での《病草紙》は、九州国立博物館所蔵で、展示品は、京博所蔵の病草紙 二形・眼病治療・歯槽膿漏 九巻の内三巻 平安~鎌倉12世紀》昨年三月に岡墨光堂さんによる修理が完了し初公開の出陳巻です。草紙ものはちょっとクスッと息が抜けます。

【中世絵画】布団を敷いて寝てみたい、雪舟の国宝がすべて一室に

圧巻!この上なく贅沢!雪舟国宝部屋です。観てください!体感してください!多分、いえ絶対!私が生きているうちにはこんな経験は二度とないだろう。雪舟の絶筆と伝えられる山水図 雪舟筆 以参周省・了庵桂悟賛 一幅 室町時代 16世紀》賛を施した東福寺の了庵桂悟、明に留学する前に山口の雲谷軒へ雪舟に挨拶に出向いたのでしょうか、しかしこの時雪舟も既に亡くなっていたことを知ります。左手の了庵桂悟賛の最後に「牧松(以参周省の別号)遺韻雪舟逝」とあります。じーんときました。この秋こそ防府へ観に行こうと思っていました。毛利の至宝四季山水図巻(山水長巻) 雪舟筆 一巻 室町時代 文明18(1486)山口・毛利博物館》雪舟68歳の作で、図録には「雪舟畢生の大作」とあります。雪舟のパトロン大内家の慶事を祝ってこれを制作、献上したと伝わっています。この巻物の中に入り込んで、山水の中を春夏秋冬一緒に旅するような・・・

【近世絵画】豪華絢爛な大画面世界、その迫力をご体感あれ

宗達の風神雷神図が普通にそこにあるような雰囲気に驚く。等伯の楓図、《高雄観楓図屏風 狩野秀頼筆》をバックに独立ケースにあるのは、私が長年恋い焦がれてきた志野茶 卯花墻 一口 桃山時代 16~17世紀 東京・三井記念美術館》 三井の所蔵で結構展覧会にも出ているのに目にしたことがなかった。会いたかったこの志野茶碗に。360度から眺める、背伸びして上から、しゃがんで下からも眺める。こんなに歪んでいたのかと釉の色から楚々とした佇まいの割には奔放な作りなのね。ごつごつ見えるけれど、手の収まりはすっぽりなのかもしれない。全期間展示で、また会いに来るよ!

【中国絵画】雪舟や等伯も憧れた至高の絵画

《飛青磁花入》東洋陶磁美術館で平常展のリストに載っているのにないなぁと思っておりましたところここにお出ましでした。図録に「典雅な芸術が文人士大夫たちによって確立した北宋・南宋から元が中国絵画の頂点とされる」とあります。山水画でなく紅白芙蓉図 李迪筆 二幅 中国・南宋時代 慶元3年(1197) 東京国立博物館》私がイメージする中国の花卉図です。芙蓉の花は朝に白く次第に淡紅に変化することから「酔芙蓉」の美称があり、紅白二幅描くことで、時間の移ろいも画面に閉じ込めているらしい。儚げな芙蓉の時間の移ろいは士大夫が好みそうなお話です。宋の陶磁にも通ずるような。宮女(伝桓野王図)一幅 中国・元時代 13~14世紀》何年か前に京都市立芸術大学の卒展でこの作品の模写を見た気がします。その時に惹かれた思いを思い出した、男装の麗人?川崎造船所創業者川崎男爵家、倉敷紡績の大原孫三郎の来歴があるそうです。

彫刻】仏像といえば、なんといっても関西

国宝の彫刻134件の内、関西以外にあるものはたった8件だそうで、関西ならではのジャンルです。四天王立像のうち広目天立像 飛鳥時代 1躯 7世紀 法隆寺》荒々しい四天王像が多い中でなんと優しいお顔なのか。現存最古の四天王で、聖徳太子への信仰に基づいて造立されたお像です。光背は笠の様だし、お顔は横から拝見するとお面をつけているようです。東寺《兜跋毘沙門天立像 教王護国寺》がめっちゃカッコイイ!

【陶磁】京都で花開く東山文化

この展示室では、墨蹟と唐物の取り合わせを楽しむ趣向です。ここでは、Ⅱ期の曜変天目とⅢ・Ⅳ期の大井戸茶碗が楽しみです。「墨蹟」迫力は伝わります。墨蹟(遺偈) 清拙正澄筆 一幅 南北朝時代 暦応2(1339) 東京・常盤山文庫》臨終に間に合わず号泣する弟子に、生き返ってこの「遺偈」を授けたという凄まじい逸話が残り「棺割の墨蹟」とも呼ばれています。(写真は別作品です)



【絵巻物】愛すべき、美の古典

Ⅲ・Ⅳ期展示の《源氏物語絵巻》と《平家納経》が楽しみですね。粉河寺縁起絵巻 一巻 平安時代 12世紀 和歌山・粉河寺》火災に遭い、痛々しい姿ながらも今日まで大切に伝えられてきました。《信貴山縁起絵巻》は、内容がとっても面白く惹き込まれます。

【染織】はかなきものに托した祈り

国宝の染織品はすべて神や仏に関わる品々で、仏教信仰のものは中国製が多くを占めています。聖徳太子が往生した天寿国のありさまを目にしたいと願った妃橘大郎女の発願により製作された天寿国繍帳 一面 飛鳥時代 7世紀 奈良・中宮寺》色鮮やかな部分が原本で、退色激しいのが鎌倉時代の模本だそうで、強い願いと高度な技術がしのばれます。《四騎獅子狩文様錦 一面 中国・隋~唐時代 7世紀 奈良・法隆寺 》フェノロサと岡倉天心が封印されていた法隆寺夢殿を開扉した際に救世観音の厨子の脇に巻き置かれていた伝えられ、ササン朝ペルシアの香りが伝わります。

【金工】日本金工の美質、ここに集結!

「刀剣女子」萌えてください。仏具、武器、武具は、日本金工の肥沃な土壌、真・善・美の高位な統一だそうです。

【漆工】漆の部屋は発見がいっぱい!!

《宝相華迦陵頻伽蒔絵そく(「土」編に「塞」ぐ)冊子箱 一合 平安時代 延喜19(919) 仁和寺》空海たちが唐で書き写した経典を醍醐天皇が捜し出し、これを納める為に新調した箱。大好きなモチーフ迦陵頻伽は、28人姿が違っているらしいです。

展示品とも一期一会、その時に出会わなければ、次はいつ会えるのかわからない。実際に目にしてからこそがあります。「こんなに大きい!」「こんなに小さい!」「こんなに剥落している!」「耀いてない!」などもあるはず。小学生のお子さんが、火焔型土器を目にして、その大きさに驚き、男子学生が「カッコいい!」と呟く、パパが娘に語る歴史と、お子さん、学生さんも教科書で見た本物に会いに行ってほしい。

今回の国宝展では、取り合わせの妙とでもいうのでしょうか、美のコラボ、美の共演、饗宴、競演、11点は見たことがあっても、同じ展示室で雪舟の国宝全部、嘆く等伯と早逝息子久蔵再会、光琳の燕子花と応挙の雪松と蕪村の楼台・・・が並べて観られるなんて、あり得ないことがあり得ています。専門家でさえそのような眼福は味わったことがないはずです。11点でも人を呼べるものばかりが、ずらりと並んでいます。次々と展開する国宝に心と頭が休む暇がありません。前のめりにみていくとクタクタに疲れてしまいます。混雑必至!予習をお勧めします。

正倉院展や中国陶磁などに出かけていつも私が感じること、戦乱、王朝の変遷、自然災害、火災、廃仏毀釈と様々な環境、状況をかいくぐって、大切に守り伝えてこられたことに感謝し、これからも伝えられていくことを願っています。

さぁ、あなたも佐々木館長のお誘いを受けて「国宝の杜」に分け入って“神秘”と“感動”を!!

【開催概要】京都国立博物館 開館120周年記念 国宝
・会場:京都国立博物館 国宝展HPは➡コチラ
・会期:2017103()1126()[ 48日間]
Ⅰ期10/3() 10/15() 雪舟国宝6件が1室に(10/22)
Ⅱ期10/17() 10/29() ➡ 龍光院《曜変天目》は、この1週間だけです!
Ⅲ期10/31() 11/12() 長谷川等伯《松林図屏風》久蔵《桜図壁貼付》親子再会。
Ⅳ期11/14() 11/26() ➡ 光琳《燕子花図屏風》応挙《雪松図屏風》蕪村《夜色楼台図》揃い踏み
・休館日:月曜日 ※ただし10/9(月・祝)は開館、10/10()は休館
・開館時間:午前9時30分~午後6時(金・土曜日は午後8時まで)
※入館は閉館の30分前まで
※日程別作品検索のご利用がお勧めです!!
・出品一覧・展示替予定表(2017.10.2PDFは➡コチラ
・テレホンサービス:075-525-2473



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ARTが好きなのか?美術館に行くのが好きなのかしら? 行きかけると拍車がかかって、前のめりになっている今日この頃かもしれません。 「知らない」「???」が増えるばかりです。
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MUSEUMコンシェルジュになりたいが、ARTには全くの素人。山間部育ち、専攻は「東洋史」、ただただ美術館へお出かけするのが大好きな私が、阪神間の美術展、アート関連施設やアートイベントなどについてアートへの思いを綴ります。つたない文章ですが、読んでくださる方々が、お出かけしてみようかなと思ってくださるきっかけになればと思っております。

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