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写実からみえるもの 『リアル 写実 のゆくえ』

写実からみえるもの 『リアル 写実 のゆくえ』

会場に入ると赤い背景に、鮭の絵が2枚。右は高橋由一の≪鮭≫。左は2003年に描かれた礒江毅の≪鮭―高橋由一へのオマージュ≫。右の絵から左の絵の間には、約150年の年月が流れています。写実と一体何なのか。画家が描きたいものは?そして鑑賞者が観ているものは何なのでしょうか。

11月5日(日)まで姫路市立美術館で『リアル 写実 のゆくえ―高橋由一、岸田劉生、そして現代につなぐもの』が開催されています。



まず、江戸の終わりから明治にかけて西洋の写実技法が入ってきたころの作品を観ることができます。
浮世絵に親しんでいた日本人たちが初めて洋画を目にした時は、どんなに驚きの言葉を発したのでしょうか。高橋由一を初めとして、画家たちが身近に存在するものを描きながら、技を磨いていく様子が読み取れます。
亡くなる自分の母親を描く五姓田義松の≪老母図≫からは、彼自身が技法を学ぼうと精進していたという枠では収めることはできない作品だと感じます。辞書で言葉の意味だけを調べると、写実とは、そのままを写し出すことになりますが、美術において写実絵画とは、そのものを描く、というだけではないということに、改めて気づかされます。


時代が進むにしたがって、描かれる対象物も変わり、また作家それぞれの個性がでてきます。

個人的に気になったのは、中原實の≪昼の星雨≫(左)、≪月光と肖像(星と女性)≫の2点です。≪昼の星雨≫に描かれている女性が読んでいる雑誌の『りく』『う‥』は、陸と海?何を意味しているのでしょうか。モデルを描いているのですが、ダリやマグリットのシュルレアリスムに通じる空気感です。これも『写実』なんだ・・・と少々驚きを隠せませんでした。

写実という響きから、存在をそのまま写し取り、それがどれだけ忠実に描けているかに注目してしまいがちです。技を見せているのではなく、画家とそのモノとの間に何があるのか、心の眼でみた存在を表現しているのが写実の意味だということを改めて感じることができました。

明治から現代の作家の作品までを観ることができ、興味深い展覧会となっています。色々な作家が織りなす時代の流れなのですが、1人の人間が精神的にどう絵画に向き合い、成長してきたのかを見ているような、そんな印象をも受けます。

どうやってこんなに描けるのか?だけでなく、作家が本当に描きたいものは何なのかなどを意識して、四角いキャンバスの世界を覗いてみてはいかがでしょうか。





『リアル 写実 のゆくえ
高橋由一、岸田劉生、そして現代につなぐもの』

会 期:~2017年11月5日(日)
時 間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜日
詳しくは、姫路市立美術館HPまで⇒

カワタユカリ の紹介

じわじわと来年の展覧会情報が出始めています。それとともに、今年の展覧会ベスト10を言い始める人も…。今年の展覧会を振り返りつつ、気分は2018年へ。鬼が笑っています。
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この記事を書いているのは
カワタユカリ

カワタユカリ

美術大好き、年齢とは反比例の駆け出し美術ライターです。
現代アートを中心に、読むと行きたくなるような記事を書いていきたいと思っています。
よろしくお願いします。

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