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この発見!何がそんなに凄いことなの? 国宝《不動明王像(黄不動)》に「御衣絹加持(みそぎぬかじ)」の痕跡を発見!!

この発見!何がそんなに凄いことなの? 国宝《不動明王像(黄不動)》に「御衣絹加持(みそぎぬかじ)」の痕跡を発見!!

国宝「不動明王像(黄不動)」(京都・曼殊院)修復から明らかになった新知見に関する説明会が京都国立博物館で開かれました。87日のネットニュース、翌88日の新聞でこのニュースを読まれた方も多いのではないでしょうか。

この発見はいったい何が凄いのでしょうか?

京都 洛北の門跡寺院 曼殊院に伝わる 国宝《不動明王像(黄不動)》に、強い横折れ、彩色の剥落、糊離れによる浮きなど劣化が生じていたため、平成25年から2年間文化庁補助事業として解体修理が実施されました。文化財の修復は、次の世代へ文化財を伝えるための保存事業であるとともに、修復過程は作品の詳細な研究の機会でもあります。

修復を担当された株式会社 岡墨光堂 岡岩太郎社長から修復の概要説明がありました。

掛軸は、絵が描かれた本紙の後裏に4枚の和紙が裏打ちされ、積層構造となっています。今回の修理では、本紙1枚を残して4層の裏打紙を全て取り除く完全解体修理となりました。昨今のブームでよく耳にする「裏彩色」、国宝《不動明王像(黄不動)》も絹地の裏から彩色が施されていました。ですから、本紙のすぐ裏にある肌裏紙を剥がす肌裏紙の除去は、本紙を傷つけないようにと作業は緊張の連続だったことでしょう。熟練の方でも120㎝角の作業だそうです。次の修復に繋げる意味でも、修復の工程はすべて記録に残されます。肌裏紙を除去して、本紙の裏から「赤外線透過撮影」が実施されました。これは今回の修復作業に限った事ではなく、記録として、表面から見えない表現やまた小さな傷を見落としていないかの目的でも実施されています。

《不動明王像(黄不動)》のお腹辺りになにやらモヤモヤしたものが見えたそうです。薄墨の線の痕跡ではないかと気づかれたのは、岡墨光堂主任技師 伊加田剛史氏です。本紙の表に薄墨で描かれていました。裏から見ても裏彩色が施されているために、肌裏紙を除去した状態でも確認はできません。薄墨の材質が、赤外線を吸収し、見えない画像が現れました。大きさは手のひらほどの大きさです。長年文化財の修復に従事してきた熟練の技師で、毎日問題意識を持ちながら修復の作品に寄り添っていく中でこそ気づくものだそうです。この不動明王像が「黄不動」であったことも幸いしました。これが金や群青や緑青などの透過しにくい色であったなら見つかっていなかったであろうということでした。この手のひらサイズの薄墨で描かれていたのは「不動明王像」のミニチュアです。写真では、裏側からの撮影のため左右が反対に写っています。仏像を作る際に霊木や神木を使って作るように、絵師が仏画を描く際も描く「絹」に「みそぎ」を施します。描き始める前に導師や絵仏師が、「香水(清めた水)」で描こうとする仏像の姿を描きました。このお清めの儀式を「御衣絹加持」(みそぎぬかじ)といいます。これで使われる「香水」は無色透明な水であるために本来はその痕は残りません。見つかった痕跡は 、不動明王像のちょうど真ん中あたりに、導師が香水でなぞれるようにミニコピーを薄墨で描いた痕と考えられ、手のひらサイズですが右手に剣を持ち衣もなびき、これから描く不動明王像を正確に捉えていました。これまで文献では「御衣絹加持」について記したものはありましたが、実際に発見されたのは今回が初めてでした。仏画で実際に発見されたことが凄い!これまでもあったかもしれないが、見過ごされてきたのかもしれないとの事でした。今回の「御衣絹加持」の発見が、ターニングポイントとなって、今後の修復作業でも発見されるかもしれません。京都国立博物館の大原嘉豊保存修理指導室長は、「何かありそうだ」聞かれたときは、驚き以外の何物でもなかったとのこと、そして「不動明王像」が信仰の対象であったことを再認識されたそうです。報告を受けられた曼殊院ご門主は、「ありがたい」と一言。

「御衣絹加持」は、日本で10世紀の終わりごろに生まれた慣習だそうで、清浄を尊ぶ日本人だからこその行われてきたものだそうです。仏画、仏像は、当然のことながら、ARTではなく、信仰の対象だったのです。

京都 曼殊寺所蔵 国宝《不動明王像(黄不動)》一幅 167.2㎝×横80.9は、日本の不動を代表する大津市の園城寺の黄不動を根本像として写した黄不動像で、平安時代12世紀に描かれた唯一もので、文様や空間表現も優れていて国宝に指定されています。

岡墨光堂さんと言えば、「鳥獣戯画」の修復も担当されており、あの時も「鳥獣戯画」が、一巻の表裏に描かれていた事が分かり、大きな話題となりました。何だか凄い技術者集団ですね。

国宝《不動明王像(黄不動)》は、京都国立博物館に寄託されてはいますが、曼殊院では“秘仏”として通常は非公開となっています。修復されたこの機会に「国宝展」で公開されることになりました。

展示期間は後半の1031()1126()です。どうぞ、お見逃しなく!

今回の発見のニュースを踏まえて秋の「国宝展」でこの《黄不動》を目にする時、それは私たちにとっても「作品」ではなく、「信仰」の対象として伝えられてきた「お不動さん」の気持ちが過るかもしれず、それは国宝展に展示される他の作品にも通ずる処です。


【参考】
・株式会社 岡墨光堂HPhttp://www.bokkodo.co.jp/
『開館120周年記念 特別展覧会 国宝』公式サイト:http://kyoto-kokuhou2017.jp/
・京都国立博物館 URLhttp://www.kyohaku.go.jp/jp/index.html
・拙ブログ「秋の京都は、京博で国宝祭だ! ワッショイ!!」・・・
・拙ブログ「秋の京都は「国宝の杜」へ。ついに始まりました『国宝展』@京都国立博物館 」・・・

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ARTが好きなのか?美術館に行くのが好きなのかしら? 行きかけると拍車がかかって、前のめりになっている今日この頃かもしれません。 「知らない」「???」が増えるばかりです。
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MUSEUMコンシェルジュになりたいが、ARTには全くの素人。山間部育ち、専攻は「東洋史」、ただただ美術館へお出かけするのが大好きな私が、阪神間の美術展、アート関連施設やアートイベントなどについてアートへの思いを綴ります。つたない文章ですが、読んでくださる方々が、お出かけしてみようかなと思ってくださるきっかけになればと思っております。

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