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奈良 西大寺と真言律宗一門の寺宝を観る。キーワードは「興法利生」

奈良 西大寺と真言律宗一門の寺宝を観る。キーワードは「興法利生」

あべのハルカス美術館で『創建1250年記念 奈良 西大寺展 叡尊と一門の名宝』が始まりました。私のお目当ては1つ、浄瑠璃寺の秘仏《吉祥天立像》でした。何年も前に浄瑠璃寺に九体仏に会いに行き、ここにとても美しい《吉祥天立像》があることを知りましたが、秘仏でそうそう簡単にはお目にかかれない。心残りとしてずーっと私の中にありました。それが今回お出ましになる!!それだけを思って出かけていきました。

「西大寺」思いつくのは、近鉄奈良線の駅、「大茶盛式」を思い出される方もいらっしゃるでしょう。「西大寺」とは、どんなお寺なのでしょう。サブタイトルに出てくる「叡尊」とはどんなお坊さんなのでしょう。

「西大寺」は、聖武天皇と光明皇后の第一皇女であった孝謙上皇が、天平宝字八年(764)の太政大臣藤原仲麻呂(恵美押勝)の反乱を平定し、翌年に重祚して称徳天皇となって「鎮護国家」を願って創建しました。2015年には創建1250年を迎えました。平城京の西の端に建てられ、父聖武天皇が創建した東大寺と並び西の「西大寺」です。後世に書かれたものではありますが「西大寺伽藍絵図」がその大きさを物語っています。「南都七大寺」の一つでしたが、都が平安京に遷ると他の寺院と同様に衰退しました。鎌倉時代になり真言密教を学んでいた「叡尊」が西大寺に入りました。既存の仏教を批判し、密教における戒律を重視し、「興法利生」をスローガンに独自の宗教活動を推進しました。つまり、彼の活動は戒律復興と慈善事業にありました。舎利容器は、釈迦の時代にもどる象徴的な物らしく 舎利に対する信仰、弱者救済、救済活動の先人たる聖徳太子への信仰、愛染明王への信仰などを通じて多くの仏教美術が制作されることとなりました。叡尊の教えを受けた律僧によって「真言律宗」として全国に広まりました。東国では、忍性が鎌倉を拠点に貧民救済などの社会福祉事業や橋や道路の建設などを行いました。昨年夏、奈良博での「忍性―救済に捧げた生涯―」展ではピンと来なかった私ですが、「あぁ、そういうことだったのか」とここで繋がりました。古刹や国分寺など平安時代には衰微していた寺院が、復興されました。現在も西大寺で行われている「大茶盛式」は、「一味和合」叡尊の教えを今に伝えるものです。

展覧会は3つの章から構成されています。では、各章で印象に残った作品をご紹介しましょう。


第1章 西大寺の創建 《塔本四仏坐像》創建当時の西大寺にあった東西の塔のどちらかの初層に安置されていたと伝えられている坐像です。各像の名称は後世のものと考えられています。創建当時の配置の再現が試みられています。4軀が揃うのは大阪展だけです。


奈良 西大寺 塔本四仏坐像 宝生如来



2 叡尊をめぐる信仰の美術

《興正菩薩坐像》弟子たちによって造立された叡尊八十歳の寿像です。2016年国宝に指定されました。たくさんの像内納入品から弟子たちの叡尊への強い想いが伝わります。

奈良 西大寺 国宝 興正菩薩坐像



貧民や病人らは文殊菩薩の仮の姿であるとの考えから文殊菩薩は民衆救済のシンボルとなり、文殊菩薩像もたくさん制作されました。

奈良 般若寺《文殊菩薩騎獅像》隣に並ぶ 京都 大智寺《文殊菩薩騎獅像》が端正な顔立ちに比べ、こちらは童子の姿が目を惹きます。髪は8つのお団子「八髻」(はっけい)で八字文殊と呼ばれています。

「八字文殊」は息災と調伏の尊像のはずが、後醍醐天皇の1324年鎌倉幕府討幕計画とも関係あるかもとのこと。



《釈迦如来立像》

西大寺本堂の現在の本尊です。

三国伝来、生身釈迦として信仰されている京都 清凉寺の釈迦如来像を叡尊が仏師善慶に模刻させた像です。

お釈迦様の姿を正しく写し、釈迦の教えそのものに帰ろうとする精神が伝わります。

 

 

3章 真言律宗の発展と一門の名宝

あこがれの京都・浄瑠璃寺《吉祥天立像》を目にして、期待にたがわず「気高く、美しい」。色白でふっくらとした頬は、天平美人を思わせます。本堂の厨子の中に安置されていたためか、彩色も綺麗に残っていて、な、なんと大阪展では360度から拝見することが出来るのです。こんな贅沢なことはありません!展覧会HPに「360度から眺める《吉祥天立像》」として注目ポイントも紹介されていますので是非ご参考になってください。 仏像マニアの“みうらじゅん”さんと“いとうせいこう”さん、東京展でもご覧になったそうですが、後ろ姿を拝見したのは初めてとのこと。みうらさんにとっては、この吉祥天は「心の恋人」一番お好きな仏像だそうです。吉祥天の髪型を後ろから眺められ、ただ垂らしているだけの髪型でなかった事に驚かれたそうです。若き頃よりこの吉祥天ファンであったみうらさんの髪型はどうも吉祥天の髪型に倣ったものらしい。いとうせいこうさんは、後ろ姿はあっさりしていたとの感想をお持ちになったようです。お二人ともに浄瑠璃寺で拝見しても後ろ姿を目にすることはないので貴重な機会だとお話されておりました。7/29()~8/6()8日間だけの特別展示ですので、お見逃しなく!!




 

 

 

 

 

 

《「矢の根五郎」絵馬》歌舞伎十八番「矢の根」を描いたものです。

宝暦4(1754) 江戸で西大寺の愛染明王坐像の出開帳があった際に2代目市川海老蔵(2代目團十郎)が愛染明王を模した隈取で「矢の根」の曾我五郎を演じ、大当たりとなり、そのお礼として西大寺に奉納しました。このご縁から音声ガイドの案内役は現在の海老蔵様です。

829~会期末まで西大寺 愛染堂の秘仏本尊《愛染明王坐像》が展示されます。叡尊が弟子たちと西大寺に三宝(仏・法・僧)が永く伝えられることを願って発願・結縁して造立された像です。迫力ある明王の姿を受け止めたいです。



奈良 宝山寺 五大明王像(厨子入)



ほか、叡尊の太子信仰を伝える 奈良 元興寺《聖徳太子立像》、

江戸時代の湛海73歳の作 奈良 宝山寺《五大明王像》

大阪 松林寺《不動明王二童子像》などなどまだまだご紹介したい作品はたくさんあります。是非お出かけになって真言律宗の寺宝をご覧になってください。



【開催概要】
・会場:あべのハルカス美術館 HP・・・https://www.aham.jp/
・会期:2017729()~924()
・開館時間:火〜金/10:00〜20:00、月土日祝/10:00〜18:00(入館は閉館30分前まで)
・休館日:7/31()8/7()8/21()8/28()
・展覧会公式HPhttp://saidaiji.exhn.jp/
【参考】
・真言律宗総本山 西大寺 HPhttp://saidaiji.or.jp/

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ARTが好きなのか?美術館に行くのが好きなのかしら? 行きかけると拍車がかかって、前のめりになっている今日この頃かもしれません。 「知らない」「???」が増えるばかりです。
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MUSEUMコンシェルジュになりたいが、ARTには全くの素人。山間部育ち、専攻は「東洋史」、ただただ美術館へお出かけするのが大好きな私が、阪神間の美術展、アート関連施設やアートイベントなどについてアートへの思いを綴ります。つたない文章ですが、読んでくださる方々が、お出かけしてみようかなと思ってくださるきっかけになればと思っております。

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