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広島と熱 『モナ・ハトゥム展』 広島市現代美術館にて

広島と熱 『モナ・ハトゥム展』 広島市現代美術館にて

現代美術館に向かうバスは途中、原爆ドーム前を通り、原爆投下の目標にされたとも言われる相生橋を渡りました。「被爆した時の地面の温度は3000℃ほどにもなったそうです。」アナウンスが流れています。学校での授業、新聞や本から原爆については学ぶ機会はありましたが、実際の場所で改めて聞くと、体も心も歪んでいくような痛さを感じます。

7月29日(土)から10月15日(日)まで広島市現代美術館で『第10回ヒロシマ賞受賞記念 モナ・ハトゥム展』が開催中です。平成元年に広島市が創設したヒロシマ賞は、美術分野で平和にもっとも貢献した作家に贈られるものです。10回目の今年は、モナ・ハトゥムに贈られることとなり、日本で初めての本格的な個展が開かれることとなりました。

モナ・ハトゥムはパレスチナ人の両親のもと、レバノンに生まれます。23歳のころ、イギリスに旅行中、レバノン内戦勃発により、帰国できなくなり、イギリスで生活することとなります。会見で、「生まれた時から身近に戦争があった。」と彼女が話した「身近」という言葉が私には、ドキッとさせられた部分でもあり、彼女の心の一部に触れてしまったような気持ちになりました。

≪その日の名残≫2017



受賞が決まった彼女は広島を訪れ、平和記念公園や資料館などを巡り、原爆の悲劇にとても驚いたといいます。広島での滞在を通じて、「熱」をテーマとし、熱のもつ力を表現しようと新作に挑みました。その一部が上の写真です。≪その日の名残≫は、家にある家具や日用品に金網を巻き、燃やした状態が作品となっています。これが、72年前の惨劇を直接的に表わした作品となっていますが、同時に、「解釈は観る人にゆだねている」とモナ・ハトゥムは、話します。他国でテロによる爆発や火事など、鑑賞者のいる国やタイミング、または個人の経験や知識によって、真っ黒に焦げ、朽ちた家具の作品は、観る人それぞれの胸の奥に落ちていくこととなるからです。鑑賞者にゆだねるという考えは、この作品に限らず、90年代以降の制作活動の上で重要なポイントにもなっています。

≪底流(赤)≫2008



美術を鑑賞するということは、美しいものを観るということだけでなく、時に痛みを感じることでもあります。時に、現代アートは難しい、敷居が高いと言われますが、歴史や、現在の世界情勢などの難しい問題を、美術を通じて感じやすくさせてくれます。モナ・ハトゥム展は、作品を通じて彼女が感じるセンサーの震えが、わたしたちに振動してくるように、怒りや悲しみ、または疑問などがじわじわと熱となり、伝わってくるものでした。

モナ・ハトゥムと≪立方体(9×9×9)≫2008



※トップの写真は、≪ホットスポット≫2013

第10回ヒロシマ賞受賞記念 モナ・ハトゥム展
会期:2017年7月29日〜10月15日 会場:広島市現代美術館 住所:広島県広島市南区比治山公園1-1 電話番号:082-264-1121 開館時間:10:00〜17:00(入場は閉館の30分前まで) 休館日:月(ただし9月18日、10月9日は開館)、9月19日、10月10日 料金:一般 1030円 / 大学生 720円 / 高校生・65歳以上 510円 / 中学生以下無料

カワタユカリ の紹介

暑い日はどうしても美術館への足が遠のき気味ですが、入ってしまえば涼しく快適。時には寒いぐらいだったりします。運動とエコということで美術館へのお出かけはおススメです。
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この記事を書いているのは
カワタユカリ

カワタユカリ

アートマニア目指して日夜勉強中?と、いっても難しいのはやっぱり苦手。気楽に、好きに、楽しみたい!関西だけでなく、日本全国津々浦々アート三昧旅が夢。

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