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上質の春画の放つオーラを受け本物の持つ醍醐味を体感する。

上質の春画の放つオーラを受け本物の持つ醍醐味を体感する。

春画展』がいよいよ京都 細見美術館で始まりました。

東京の永青文庫で昨年開催され、SNSでも大変な話題で、「良かった」の感想が多く、それも若い女性が多いように感じておりました。

どうなんだ!なんでなん?と思いながら、「報道説明会・内覧会」に参加させて頂きました。「春画」と聴いてどのようなイメージをお持ちでしょうか?

私は、「春画」のイメージは淫靡でおじさんたちがひそひそと隠れて眺めるものだと思っておりました。芸術新潮の特集(20151月号)を見ても、飛ばし読み状態でまじまじとは見ることが出来ませんでした。本物を前にしてもそうではないだろうかと思ったりしておりました。内覧会の前日に若い友人から「何を言ってるんですか。日本画、歴史画ですよ!内容なら今の漫画の方がもっと凄いんですから・・・」と若い人には作品を観るときに垣根がないのですね。素晴らしい。背中をドンと押してもらいました。

東京永青文庫で超話題となった「春画展」のプレス発表会の会場は満席、その期待の大きさが伝わってきます。細見美術館担当学芸員 伊藤京子氏の司会で始まりました。淺木正勝 春画展日本開催実行委員会代表から「春画展」開催に至るまでのお話を伺いました。ヨーロッパ各地で春画展が開催され、学術的な国際研究も進み、2013年-2014年ロンドン大英博物館での春画 日本美術における性の楽しみ」展が大成功をおさめました。 まさに「世界が、先に驚いた。」です。しかしながら大英博物館でも後援者探しに苦慮し、東京美術倶楽部代表取締役会長でもある淺木氏と美術商の浦上満氏がスポンサーを引き受けられたそうです。このお二人で“Shunga in Japan LLP”を立ち上げ、日本でも展覧会を開催する活動を始められ、開催会場を捜し多くの美術館、展覧会場を当たられましたが、現場の学芸員さんたちは「是非やりたい!」との反応ですが、開催の決定までには至らなかったそうです。

20年以上も前から無修正の書籍や雑誌が流通し、複製品の出版が可能なのにオリジナルの鑑賞が本国日本で出来ないというのが日本の現状だそうです。そんな中「アクセスも悪く、それほど広くないが・・・」と手を上げられたのが細川護煕永青文庫理事長でした。私このお話を伺いながら心の中で「流石、殿!」と。20159/19-12/23永青文庫で開催された「春画展」には、一日平均2500人、期間を通しての来場者は21万人でした。蓋を開けてみれば大成功だったのです。春画だけの展覧会が開催されたことは画期的な事であると仰っておられました。淺木代表と一緒に活動されてこられた浦上氏も「春画は日本が世界に誇るアートであり、世界文化遺産に!」という大英博物館のティモシー・クラークさんのお話を紹介され、「本物の持つオーラを伝えたい」と熱く話されました。実行委員のお二人はじめ皆さん京都でも絶対成功させたいと強い意気込みを感じました。

大英博物館では、歌麿、北斎など版画の春画を中心とした展覧会でした。永青文庫では肉筆の春画を中心とした展覧会で、そこはそれ「大名と春画」が大きなテーマとなっていたそうです。そして今回の細見美術館では、「京都と春画」京都展のみの特別出展13点を含む全134点の展示となっています。京都の西川祐信・祐尹親子の作品や大阪の絵師 月岡雪鼎など上方の「春画」にも注目です。

展示場に移動してみると、「春画」は、私が思っていたよりももっとあっけらかんとして「性」を享受している様に受け止めました。

各展示室に図録を監修された先生がいらして、質問を受けてくださいました。どんなお話を伺っても「春画」については真っ白な状態で耳を傾けることが出来、何を伺っても新鮮で興味深くとても面白かったです。

第一室の国際日本文化センター名誉教授早川聞多先生のお話が尽きなくて、次々出てくるお話があまりにも面白く、まだまだお話がお聞きしたく、そこから次の部屋に動けず先へ進めず困りました。

第1室に入るとまず大きな屏風が目に入ります。そのような大きな屏風をこそこそとは見られる訳もなく、この屏風の前で宴会をしたのだろうという事でした。なんとおおらかな。日本ではそのように大らかに春画を享受する風土があったのでしょう。では、そのように受け入れる感覚が大きく変わったのはいつからなのか?明治維新を迎えキリスト教精神に根付いた西洋化が主流となり、新憲法を作るにあたって見本としたフランス法に「猥褻法」が存在することに驚きました。廃仏毀釈の様に、おおらかな精神にも強い規制がかかり、「春画」と呼ばれるものは世間から遠いところへ追いやられることになったそうです。しかし、そこに目を止めたのが海外のコレクターです。浮世絵のコレクションと同一線上にあります。

春画は、婚礼のお祝いものとして夫婦和合、子孫繁栄を願って大名などが有名な絵師に描かせました。昔のお姫様は幼くして輿入れしたので指南本の意味もあったのか?という問いには、「指南本ではなかった。」が回答です。とてもこんな体位はありえず、“how to sex”ではないと言う先生のお話でした。一方、図録では浮世絵の第一人者 小林忠岡田美術館館長は歌麿の版画を例に上げて「母親から嫁入り前の娘に性の指南役として春画の絵巻や版本が手渡されるのは、ごく当たり前の家庭における通過儀礼であったようである」と書かれております。

また、春画には古来戦場に赴く将兵に持たせるお守りの役目もあったらしく、武士は1巻ずつお守りとして「春画」を持っていたそうで、男子15歳の元服の際に鎧兜を調えるのと一緒に鎧櫃の中に春画1巻をいれたと仰っておりました。日清、日露戦争でもその風習が残っていたのか、政府が兵士に春画を配っていたらしく、ドイツで捕虜になった兵士より見つかってキリスト教国で大騒ぎとなり、政府が慌てて版木を焼き捨ててしまったことがあるそうです。京都と春画と言う点では、「春画」は平安時代の中期にまで遡り、一品物の肉筆による絵巻物です。舞台は洛中洛外、登場人物は貴族や僧侶、を当代一流の絵師が描いています。仏教的人間観を後ろ盾に春画が生まれた?春画は12図で1巻の2巻が1セットです。京都で古春画が伝わっているのは密教系の寺院だそうで、春画の12図と言うのが曼荼羅や灌頂と関係があるのではないか?との早川先生のお考えです。空海が最澄にも伝えなかった「理趣経」にもヒントがあるのではないか?とまだまだお話は尽きませんし、微妙なお話(寺院における僧と稚児の関係とか)もあるので、ご興味のある方は直に先生のレクチャーをお聞きください。

第2室は、浮世絵版画です。こちらでは京都精華大学の鈴木堅弘先生にお話を伺いました。

版画本の摺り彫の見事さが分かるように独立の展示ケースを設けて三方から見ることが出来るようになっています。彫りの細かさは毛彫りで分かるそうで、毛1本1本細かく精緻に彫っているとの事でした。北斎の有名な蛸が出てくる春画【喜能会之故真通】私にはエグク気持ち悪くて・・・どうも、ここまで描き込むのが北斎かとも思いました。海外で“UTAMARO”といえば「春画」を意味すると聞いたことがあります。歌麿の【歌まくら】はなんとも良い、そう直接的な描写でなくてさらっと綺麗。鳥居清長【袖の巻】色が綺麗、彫りが良くて肥痩のある線がくっきりと鮮やかです。先生曰く、春画は曲線が多く、彫るのが難しいのです。成程、人間の体や肌蹴た着物です。一流の絵師による浮世絵では、その当時に流行った着物の柄がそのまま描かれているのだそうで、着物の柄にも注目です。細かな模様が彫師、摺師の技によるものです。【袖の巻】とある様に、縦は短く横に長い図がこれも12図で1巻をくるくると巻いて腕にはめ袖の中に入れていたそうです。

第3室は、浮世絵版画の多様な切り口の面白さです。小さな「豆版」の版画も紹介されています。携帯して見せっこしたのでしょうか。こちらでは国際日本文化センタ- 石上阿希先生の担当でしたが、時間が迫っていたため残念ながらお話を伺えませんでした。

※3/27(日)13:30~狩野博幸先生との講演会(有料)が開催されます。

 

上質な春画とは何なのか?本物とは何なのか?歌麿、北斎、清長から土佐派、住吉派や狩野派など当代一流の絵師が描いた、また大名などが描かせた肉筆や、彫り摺りともに精緻で洗練された版画の事なのです。明治以前は、副業に春画を描くことはなかったそうで、昭和に入ってからだそうです。それはもちろん似せていても粗悪なものです。今回の展覧会では、春画の初期から明治までを網羅し、且つ上質のものを展示したという事でした。

内覧会ではじっくりと観る時間もなかったのですが、本物を観る醍醐味は感じちゃいました。

日本で生まれた春画なのに日本で本物の展覧会が開催出来ない。青少年に与える影響を考えると、チラシさえ置かしてくれない所もあり、開催に当たっては、法務省や警視庁へも説明に行かれたそうです。永青文庫、細見美術館と私立の美術館でないと未だに日本では開催できないのが現状でしょう。大英博物館では16歳以下は保護者同伴ならOKだったとか。

 



 

「春画展」は18禁で、ミュージアムショップも18禁です。


4000円もする豪華図録はずっしりと家宝になりそうです。

 

美術館を出る際に、内覧会後のレセプションに出席される細川理事長を見かけました。

明治以降の規制でまだまだ見つかっていない春画もあるそうで、

あなたの蔵の中に眠っているかもしれませんよ!

【細見美術館 春画展 展示作品画像(一部)】


 

 

 

【画像キャプション】
(上段左)喜多川歌麿 「歌まくら」 浦上満氏蔵【前期展示】
(上段中)鈴木春信「煙管]【後期展示】
(上段右)葛飾北斎「喜能会之故真通」 浦上満氏蔵【前期展示】
(下段) 蹄斎北馬「相愛の図屏風」平戸千里ヶ浜温泉 ホテル蘭風蔵【前期展示】(京都展限定展示)

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ARTが好きなのか?美術館に行くのが好きなのかしら? 行きかけると拍車がかかって、前のめりになっている今日この頃かもしれません。 「知らない」「???」が増えるばかりです。
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MUSEUMコンシェルジュになりたいが、ARTには全くの素人。山間部育ち、専攻は「東洋史」、ただただ美術館へお出かけするのが大好きな私が、阪神間の美術展、アート関連施設やアートイベントなどについてアートへの思いを綴ります。つたない文章ですが、読んでくださる方々が、お出かけしてみようかなと思ってくださるきっかけになればと思っております。

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