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挑む展覧会  O JUN×棚田康司「鬩(せめぐ)」展

挑む展覧会  O JUN×棚田康司「鬩(せめぐ)」展

OJUN×棚田康司『鬩(せめぐ)』展はとてつもなく大きな化け物だ。

今回の見どころの1つ、画家O JUNと彫刻家棚田康司の2人の作家が挑む公開制作を楽しみにしていた。地下の展示室に向かっていると、いつもと違う強い匂いがした。木の匂いだ。現場に来た!とテンションが上がる。

一部屋そのままが2人の制作室となっていた。しきりがない。壁には制作途中のキャンパスが立てかけられていた。ここでO さんは、背中越しに棚田さんの気配、木の匂いを嫌でも感じて絵に向き合う。反対に、棚田さんは、顔をあげるとOさんの作品の過程がみえる向きで作業している。観ているわたしたちでさえ、この状況の過酷さを感じる。

その日は、棚田さんがいた。4年前の同館で開催された棚田康司『たちのぼる。』展を観て、木に呑まれるか呑まれないかのところで作品を作っている人なのかと、勝手に想像していたのだが、そんなイメージとは裏腹に、棚田さんは冷静な面持ちの人だった。

今回の展覧会にあたり、2人は6日間の制作合宿をしている。そこで1冊のノートを交換し、質疑応答を交わしたという。それが、その制作室に展示されている。その中で、Oさんが棚田さんに「彩色する理由を教えてください」と質問している。
「自分自身が木と同じ位置になるためです。」と答える棚田さんは、今、目の前にいる大柄な棚田さんとは別人のように見えた。木の存在は、作品として形になったとしても、彼をけしかけると答えている。
制作室に散らばっている木くずをミーハーな気持ちでもらった。しばらくすると、カバンの中は、木くずの発する匂いでいっぱいになり、また木くずを入れた紙袋は湿っていた。削られてもまだ生きていると、少し怖くなった。棚田さんがOさんに答えていた気持ちは、こんな気持ちの何百倍のものなのかもしれない。

会場を回わるうちに、この展覧会についていこうと必死だった。

2階の「絵画×彫刻」とタイトルされた部屋は、異様な明るさを感じて、入口でちょっと戸惑った。
OJUNさんのクレパスや鉛筆を使っての作品は、子供がするように、床に向かい寝そべって描いていると教えてもらった。幼少期に感じた床にあたるクレパスが打つ音や感触を今も同様に感じているという。実際の作品を前にすると、印刷物からでは決して判らない「奥」を感じた。今までOJUNさんの作品はぺたっとしたかっこよさだと思っていた。そんな風に簡単に捉えていたことが、申し訳なく感じた。

壁一面にパズルのように飾られた作品は鉄のフレームとガラス板の中に閉じ込め展示されている。その額装をOさん自身は、「嵌め殺す」と呼んでいる。図録にはこの行為を「標本」のようだとも書かれている。隙間がなく、絵と鉄枠とガラスがピタッと窒息させた状態が作品となる。はめ込まれた絵画は、ガラスの中でびくともせず、じっと息をひそめているように感じた。Oさんは描いた余韻や、Oさんを感じられる雰囲気をを隠そうとしているのだろうか。
しかし、その上に棚田さんがジャワ島に2カ月滞在し制作した「12のトルソー」シリーズが置かれている。床に置かれたOさんの作品の鉄フレームから、生えているかのようだ。嵌め殺されても生きる力のパワーが、部屋に充満している。入口で感じた異様さの原因はこれなのか。

実は、まだ『鬩(せめぐ)』展は、私の中でうまく消化しきれていない。私にとって、大きな展覧会になる証だと思う。いつかこの出会いの意味に気づくときまで、私は私自身と鬩ぎあうと心に誓った。

伊丹市立美術館 開館30周年
O JUN×棚田康司『鬩(せめぐ)』展

会 期:~ 2017年08月27日 (日) 月曜日休館
入場料:一般 800円、大学生・高校生 450円、中学生・小学生 150円
会期中何度も入場できるパスも販売中。
公式HP 

 

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芸術の秋、楽しんでいらっしゃいますか。まだまだ展覧会盛りだくさん。寒くなっていく季節ですが、体調に気を付けてください。
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この記事を書いているのは
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カワタユカリ

美術大好き、年齢とは反比例の駆け出し美術ライターです。
現代アートを中心に、読むと行きたくなるような記事を書いていきたいと思っています。
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