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ベルギー500年の絵画の歴史を遡ると見えてくるもの@兵庫県立美術館

ベルギー500年の絵画の歴史を遡ると見えてくるもの@兵庫県立美術館

  • ブリューゲル研究家の森洋子先生の講演会に合わせて兵庫県立美術館で開催中の『ベルギー奇想の系譜』展に行ってきました。展覧会のタイトルもタイトルのフォントもポスターも「この展覧会面白そう行ってみようかな。」となるようで、当日は若い人や小さいお子さん連れの方も多く、ちょっと新鮮な感じの展示室でした。小さなお子さんにはワークシートも用意されていて、不思議な生き物を捜しながら会場を巡れる工夫もされています。
今回の一番の呼び物は、ポスターやチラシにもなっているヒエロニムス・ボス(1405~1516)工房《トゥヌグダルスの幻視12世紀にアイルランドで書かれた説話の放蕩の騎士トゥヌグダルスが主題となっています。騎士トゥヌグダルスが天使に導かれて巡った地獄の懲罰の様子が描かれています。ボスが描いた罪のテーマをピーテル・ブリューゲル()(1525/30~1569)が版画の世界で表しています。これらの作品については、「ARTことはじめ」では内覧会にも参加された“たねもー”さんのブログに詳しいのでそちらをご覧ください。

ボスとブリューゲルが来ると聞いて、私にとってはこの夏に国立国際美術館へ巡回する『ブリューゲル「バベルの塔』展の前哨戦、予習編の位置づけで出かけていきました。

そこに描かれる得体のしれない創造物は、フランドルの絵画でよく見られる風刺や教訓を含んでいます。ブリューゲルの版画を見ながら、この時代の版画の技術力を改めて認識した次第です。そういえばクラーナハ(14721553)も怪しい女性像を描く一方で、ルターの宗教改革を版画で後押ししていました。ブリューゲルの版画が映像となって、奇怪な生き物が動きだすと、アニメーションのために原画が描かれたかのようで本当に楽しい。しかし、次に登場するルーベンスの版画を目にすると「さすが、ルーベンスだ」とうなってしまうほどです。第1章 「15-17世紀のフランドル美術」の解説には「ハイブリッドの悪魔」とあり、「ハイブリット」って何なんだろう。

2章は「19世紀末から20世紀初頭のベルギー象徴主義・表現主義」です。

フェリシアン・ロッブス(1833-1898)舞踏会の死神ボードレールの『悪の華』に影響を受けたものです。19世紀末へ向かう不安や近代化が進む中社会への矛盾が時代背景にあったのかもしれません。ニーチェ(1844-1900)の「神は死んだ」の言葉を思い出します。仮面と骸骨の画家アンソールや両性具有の不思議で神秘的なクノップフも確かにベルギーだった。

3章「20世紀のシュルレアリスムから現代まで」

シュルレアリスムから始まります。代表するのがポール・デルボールネ・マグリットす。二人はベルギー王立アカデミーで共に学んだ1つ違いだそうです。シュルレアリスムといっても表現の仕方は全く違います。京都で観たマグリット展よりもずっとすんなり入ってくるマグリットでした。

ヤン・ファーブルフランダースの戦士(絶望の戦士)トマス・ルルイ生き残るには脳が足りない》インパクトあって、ちょっと夢にみそうでした。

こんな風にベルギーの絵画を500年一つのテーマで観ていくと、そこに何か「奇怪なもの」を表現する共通項もありそうな気もしてきます。行ってみようと人を引き付けたのはボスやブリューゲルの描く“ヘンテコなcreatures”ですが、この展覧会はこの時代に焦点を当てたものではなく、この時代から現在までのベルギーの絵画を追ってみると、底に流れる共通項を見出そうとするものでした。それを『奇想』という言葉で表したのです。

最後に県美プレミアム「Out of Realも是非回ってください。

1章「繋・関」では、壁一面に田中敦子の作品がずらり。3章には、2月のバックヤードツアーで修復中のブタの剝製が修復を終えてお披露目されています。

4章「虚・成」では、高松次郎の影が目を惹き、




彫刻展示では、エルンストバスチューユの精霊》を見上げました。

「集客数」を狙うばっかりの展覧会で本当に良いのだろうかと私は感じています。
【開催概要】
・会期:2017520()79()
・開館時間:午前10時~午後6 (金・土は午後8時まで)
ただし、入場は閉館の30分前まで
・休館日:月曜日
・展覧会HP:
【今後の関連イベント】☆☆☆
記念講演会2
「奇想のイメージ-マグリットとシュルレアリスム」
講師:速水豊 三重県立美術館長
618() 午後2時~ @ミュージアムホール
学芸員による解説会
午後4時~ @レクチャールーム
6/17()「第2 19-20世紀ベルギー象徴派・表現主義」
7/1() 「第3 20世紀のシュルレアリスムから現代まで」
・こどもイベント「わたしの幻想世界」 詳しくはこちら
6/24() 午前1030分~/午後2時~ @アトリエ2
参加費:500円(要事前申込・先着順)
【参考】
・ブログ「ノラの絵画の時間」

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ARTが好きなのか?美術館に行くのが好きなのかしら? 行きかけると拍車がかかって、前のめりになっている今日この頃かもしれません。 「知らない」「???」が増えるばかりです。
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MUSEUMコンシェルジュになりたいが、ARTには全くの素人。山間部育ち、専攻は「東洋史」、ただただ美術館へお出かけするのが大好きな私が、阪神間の美術展、アート関連施設やアートイベントなどについてアートへの思いを綴ります。つたない文章ですが、読んでくださる方々が、お出かけしてみようかなと思ってくださるきっかけになればと思っております。

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