ライターブログトップへ

桃山・江戸時代の文化の粋、風俗画を楽しむ@大和文華館

桃山・江戸時代の文化の粋、風俗画を楽しむ@大和文華館

大和文華館の『国宝「松浦屏風」と桃山・江戸の絵画―都市のにぎわいと成熟―』に出かけてきました。この美術館の展観は、展示がとても丁寧な印象を受けます。学芸員さんの気持ちが伝わってくる今回も良い展覧会でした。普通にふらっとお出かけしたので、展示作品の写真はありません。ここのお庭の写真を載せておきます。主な作品は、美術館のHPの作品解説のリンクを貼っております。動画による解説はとても分かり易いですので、是非そちらもご覧ください。

展示室入ってすぐに竹の中庭を背に3つの独立ケースがあります。順路を踏まずにまずそこに吸い寄せられてしまいます。《扇面貼交手筥》尾形光琳筆となっています。手筥の全面に金箔を敷き詰めて、扇面八面と団扇四面が貼られています。三面の扇面には光琳の落款と印章があります。扇面をただベタリと貼るのではなく、扇面の形と描かれた画からどう貼って、どう見せるかを考えていて、光琳はこの様な空間デザインがとても上手い、洒落ていると。どの面にも心が行き届き、面を繰るごとに驚きがあります。それは「八橋蒔絵硯箱」で一つの宇宙を作り上げていることからも明らかです。リンクの動画では、展示では見られない底や懸子の裏面や筥の内底までも紹介されています。ここに貼られた扇子や団扇がそれぞれ使われた後にこの手筥に貼られたものらしく、雁金屋で扱っていたものなのでしょうかしら。

今回の展観は、戦国の世をへて泰平の世へと移っていく桃山、江戸時代には、都市が発達し、人や物資や情報までも往きかい、庶民の活動も活発になり、現生を享受しようとし、その暮らしや楽しさを描いた風俗画が隆盛したようです。

祭礼・遊楽-都市文化のにぎわい-」では、《京奈名所図扇面冊子》京や奈良の名所を扇面一枚ごとに描き、冊子にまとめたものです。扇面という決して大きくない面にその形を上手く利用した画面構成とで、金雲もちゃんと描き分けられています。住吉、西宮、松島、箱崎八幡宮など京都奈良以外のものも含まれています。ある種のガイドブックだったのでしょうか。

風俗画と言えば、この美術館所蔵でも代表的な《国宝 婦女遊楽図屏風》「松浦屏風」遊女や遊里で養われている童女や禿たちが等身大に描かれた大きな屏風です。等身大の女たちに着物を着せる様に、丁寧に描かれた衣裳は当時の流行の最先端でしょうか。彼女たちが手にする物は、タバコ、キセル、ガラス、カルタと南蛮渡来の物です。ロザリオをおしゃれとして掛けている姿もあります。(金で描かれた十字架は後に消された跡が残っています)九州平戸藩松浦家に伝来したこの屏風、平戸藩も外国との交易で入手したものを持たせたのでしょうか。髪型も結っているというよりは、垂らしていたり、一つに縛って見たり、お団子にしたりで、寛いだ空気感が漂います。一双の屏風に左右対称に人物が描かれ、安定感も感じられます。大きさを是非実感してほしい屏風です。

物語・歌仙―王朝文化へのあこがれ―」世の中が安定してきた江戸時代になると、宮廷の力も息を吹き返し、古典復興の機運も高まったそうです。そこへ出版文化が普及して、武家や庶民にまで和歌の伝統が広まることとなりました。しかし「伊勢物語」どうしてこれほど人気なのかと。源氏物語と二分するほどではないでしょうか。男前はいつの世でも絵になるというところでしょうか。大和絵にはぴったりの画題かもしれせん。

なんど観ても大好きな業平が思いを寄せた女性をおぶっている《伝俵屋宗達筆 伊勢物語図絵巻 六段 芥川》私はこの女性が可愛くて愛おしくて。在原業平が長く思いを懸けてきた(とキャプションにありました)女を夜の闇に紛れて誘い出します。外の世界を知らない女は、下草に宿る露をみて「あの美しく光るものは何?」と尋ね、業平が女を振り返る場面が描かれています。人物の顔はちょんちょんとだけ描かれているのにも関わらず、この場面を知っていると二人の心持も伝わってきて、じわぁ~とその物語の世界へ惹きこまれていくのは、私だけでしょうか。ぼやんと描かれた背景に流れるような詞書もあっているようにみえてきます。

「歌仙」とは、優れた歌人を意味し、教養としての和歌と一緒に歌仙の姿を描いたのが「歌仙絵」です。《岩佐又兵衛筆 三十六歌仙絵敦忠》この時代の風俗画と言えば、一時期どっぷり虜になった又兵衛 を思わぬはずがありません。この敦忠のお顔は「豊頬長頤」で又兵衛の特徴を表していて、福井県美でみた《野々宮》を思い出しました。そうそう又兵衛はこんな感じ、「伝」とある所から又兵衛工房というところでしょうか。

《三十六歌仙色紙貼屏風》これは本当に綺麗、美しかったです。元々は近衛家に伝えられたもので婚礼調度として誂たものらしいです。流麗に認められた和歌や歌仙の姿もさることながら、何よりも色紙が美しい。金泥銀泥で草花や樹木が描かれて、その模様が和歌や歌仙の後ろに楚々と見え隠れします。それに比して色紙が貼られた下の部分は金と白の市松模様に桐の紋が描かれ、パキッとすっきりと目に映りました。この上下の対比もなんとも雅とでもいうのでしょうか。今の世には生まれ出てくることのない調度かと。

故事人物・山水―中国文化へのあこがれ―」

《尾形光琳筆 雪舟写山水図》光琳が雪舟の《破墨山水図》を写したものです。かの光琳が、雪舟を日に何枚も模写していたらしく、そこから何を学び取ろうとしていたのでしょう。とても興味深く観ました。

西洋人物・風景―西洋文化のおとずれ―」鎖国の江戸時代でも出島から西洋文化が流入します。特に銅版画の影響は大きかったのではないでしょうか。陰影をつけた描き方や遠近法のはっきりした描き方に当時の絵師たちは驚いたはずです。ちょうど取材の立ち合いで学芸員の方がいらしたので、お尋ねすると「私たちが2次元のものを3次元で見た時の様な驚きではなかったでしょうか。」との分かり易いお話をしてくださいました。サントリー美で開催していた時から気になっていた秋田蘭画の小田野直武筆《江の島図》彼は、司馬江漢にも大きな影響を与えたそうです。原画も分かっている石川孟高筆《少女愛猫図》メソヂント銅版画を筆と墨で描いたもので、ローマ字のサインも入っていました。この時代の人のチャレンジ精神を見た思いでした。

この展示室で2時間以上も粘っているのは私だけかもしれないが、じっくり観るとテーマに沿った作品がとても興味深い。今回ご紹介出来なかった又兵衛の他の作品や、乾山の晩年の作品《武蔵野隅田川図乱箱》、宮川長春のすっきりとカッコいい《美人図》、大和絵の耽美な世界?伊勢物語を描いた数々、応挙の《四季山水図屏風 秋隻》などまだまだまだあります。会期末が近いのでお急ぎください。大和文華館さん、入館料もお安い、あべのハルカス美術館などに置いてあるチラシを持参すれば2割引(大人)ですが、ちょっと遠いけれど奈良博とセットで来るとして、友の会に入会しました。1年間2000円也。

【開催概要】
・会期:2017414()514() 会期末間近です。
・休館日:毎週月曜日
・開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時まで)
・列品解説:毎週土曜日午後2時~
・大和文華館>展覧会HP:

licoluise の紹介

ARTが好きなのか?美術館に行くのが好きなのかしら? 行きかけると拍車がかかって、前のめりになっている今日この頃かもしれません。 「知らない」「???」が増えるばかりです。
カテゴリー: +展覧会   タグ: , , , , , , ,   この投稿のパーマリンク
この記事を書いているのは
licoluise

licoluise

MUSEUMコンシェルジュになりたいが、ARTには全くの素人。山間部育ち、専攻は「東洋史」、ただただ美術館へお出かけするのが大好きな私が、阪神間の美術展、アート関連施設やアートイベントなどについてアートへの思いを綴ります。つたない文章ですが、読んでくださる方々が、お出かけしてみようかなと思ってくださるきっかけになればと思っております。

コメントは受け付けていません。