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いつまでも頑張らなくてもいいの?憧れの隠遁生活って?

いつまでも頑張らなくてもいいの?憧れの隠遁生活って?

桜さくらで、京都は大変な賑わいでした。外の喧噪を忘れる静かな展示室で観る清雅な「隠遁生活」。京都鹿ケ谷にある泉屋博古館で開催中の『楽しい隠遁 山水に遊ぶ~雪舟、竹田、そして鉄斎』に行ってきました。

展覧会の紹介文に「本展では、主に日本の文人たちが理想の隠遁空間をイメージして描いた山水画や、彼らが愛玩した中国の細緻な文房具の名品を中心にご紹介します。」とあります。

そもそも「隠遁」って?というところからですが、「世間の喧噪を離れ、大自然に囲まれて、お気に入りの物に囲まれながら静かに日々を送る。時に遠来の客と、大自然を前に茶を飲み酒を酌み交わして他愛もない話に興ずる。」

キーワードは「清雅」使わないですねこの言葉「清く雅?」

そもそもそんな暮らしは出来るはずもないのですが、そんな暮らしを夢見て、世間の喧噪を、世事を忘れようとするというところでしょうか。それは単なる現実逃避ではなく、人生の本質とも考えられていた様です。

この美術館のコレクションの元となった15代住友春翠は、中国趣味で、煎茶を嗜んでいたそうです。大徳寺家 から住友家に入った15代春翠が、多忙を極める生活であったことは想像に難くありません。父譲りの文人趣味を持つ春翠は、描かれた隠遁生活を眺めながら、思索にふけったのだろうかと。お軸に描かれた隠遁生活は、山深くに庵を建て大自然に身を委ねる「晴耕雨読」の生活です。庵の側には川が流れ、滝も落ちる。従者が居て身の回りの事はしてくれそうです。

漢学の素養があってこそ鑑賞できる画題ですが、キャプションも詳しいのでご心配はいりません。「清貧」何年か前にこんな言葉流行りましたね。

中国の「隠遁」とは、官位に着きたかったが夢破れの人が多いように思われる。「隠遁」生活を送りながら自分はいかに清廉であるかを示しているようにも見えます。日本でも好んで画題にされる「竹林の七賢人」、伯夷・叔斉(悪い王なら討って当然、民を助けるのが筋と思うのですが)など、論語や老荘思想に拠っています。

これは巧い!と思ったのが橋本雅邦 《許由図》。引かれた線がのびやかで観ていて気持ちがいい。幕末から明治に生きた雅邦は、世の中の価値観がひっくり返るのを目の当たりにしています。狩野派を学んだ雅邦が西洋画の描き方も取り入れながら描いた「許由」、「許由耳洗で有名で、多くの画題にもなっていますが、雅邦の「許由」には、後ろ手にぽいっ!されて転がっている瓢箪が描かれています。この瓢箪から、松に吊るした瓢箪が耳障りな音を発するので、怒って瓢箪を捨てたエピソードを描いているそうです。こっちの画題を雅邦は何故描いたのでしょう。

春翠の中国趣味のコレクションとして、「煎茶道具一式」と「文房道具」が展示されています。お煎茶は、江戸時代に大流行したようで、明治になっても「煎茶会」が催された様です。「茶の湯」ほど道具の取り合わせも堅苦しくなく、ジャンルを問わない自由で柔軟な取り合わせでよく、

春翠の「青銅器コレクション」は、、住友で「銅」からもありましたが、「青銅器」を煎茶の席飾りとして使っていたようです。

硯や墨や筆などの文房具は、とても使える代物ではなく並べて鑑賞して楽しむものだったのでしょう。お煎茶は、隠者の精神を具現化したもので「清風」というらしく、文房道具は「文雅」と言う言葉があるらしい。「石」、「奇石」もあります。中国の絵画などに吉祥を表すアイテムの1つとして描かれている穴の開いた石、「太湖石」は、専用の紫檀の台の上に鎮座していました。

村田香谷《文房花果図巻》は、住友家の煎茶席を飾った物が描かれているようです。お道具偏重に傾いたのは、「茶の湯」の近代の数寄者にもみられるところですね。

世の束縛を受けず、自然の摂理に従って暮らせる「桃源郷」は、「桃源郷」であって、漢詩や文人画に描かれた世界ですが、こんな絵の世界を春翠たちはどの様にみていたのでしょう。

漢学の素養も「隠遁」への理解も浅い現代では、描くのは難しい世界で、写すことは出来ても、その精神までは無理でしょう。日々の生活に追われる世知がない「今」にあって、世俗から暫し離れて「隠遁」の世界へ誘ってもらってはどうでしょうか。

泉屋博古館さん、哲学の道にも永観堂にも近いけど、有難いことに平日空いています。美術館側としては、動員を図りたい所かと思ったりしますが、私は毎回毎回得した気分で、ゆっくりまったりじっくりさせて頂いています。

こちらの青銅器コレクションは、流石、住友さん!!驚きのコレクションですので、是非!


【開催概要】
・泉屋博古館 京都鹿ケ谷 HP
・会期:201734()57() お急ぎください。
・休館日:月曜日、ただし4/25()は休館
・開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後430分まで)
※泉屋博古館 京都 facebook

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ARTが好きなのか?美術館に行くのが好きなのかしら? 行きかけると拍車がかかって、前のめりになっている今日この頃かもしれません。 「知らない」「???」が増えるばかりです。
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MUSEUMコンシェルジュになりたいが、ARTには全くの素人。山間部育ち、専攻は「東洋史」、ただただ美術館へお出かけするのが大好きな私が、阪神間の美術展、アート関連施設やアートイベントなどについてアートへの思いを綴ります。つたない文章ですが、読んでくださる方々が、お出かけしてみようかなと思ってくださるきっかけになればと思っております。

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