ライターブログトップへ

「仏師 快慶」ことはじめ 『快慶展』@奈良国立博物館

「仏師 快慶」ことはじめ 『快慶展』@奈良国立博物館

ちょう今年は慶派Year、春に奈良博で快慶展、秋に東博で運慶展が開催され、慶派の二大仏師、いえ日本を代表する、誰もが知る仏師の展覧会が開催されます。

『特別展 快慶 日本人を魅了した仏のかたち』@奈良国立博物館 是非とも記者内覧会に参加したく思いました。しかしながら、「快慶」と聞いて知ってることは・・・≪東大寺南大門金剛力士像≫を運慶と一緒に造ってる?と、この3月に訪れたばかりの藤田美術館でみた≪地蔵菩薩立像≫ しか思いつきません。お寺巡りもしてるし、奈良博へも何度も伺ってますし、その度に「仏像館」にも立ち寄ってますが、快慶について皆無と言っていいほど全く分かっていない私です。(愕然!!)

そんな真っ白な私から「快慶ことはじめ」として内覧会で山口隆介担当研究員から伺ったことなどをお伝えできればと思います。

運慶快慶ともなればこれまでに沢山の展覧会が開かれてきたと思い込んでいましたが、運慶快慶展、運慶とその周辺の仏師たちなど、数えるほどしかなく、今回の様に「快慶」展と銘打ったものは初めてだそうです。何故なんだろう?快慶の造った仏様の多くがお寺のご本尊となっており、本尊をお寺から連れ出す訳にはいかないからだそうです。お盆をはさむ時期なぞもってのほかです。伺って成程と思いました。今年は秋に東博で『運慶展』も開催され、運慶快慶と狙って同じ年に開催となったと思っていましたが、そうではなくたまたま開催年が同じになったそうです。快慶の造仏を多く所蔵されている高野山金剛峯寺の広目天の修理を待っての開催となったとも伺いました。醍醐寺の弥勒菩薩坐像、清水寺の千手観音坐像、東大寺の僧形八幡神坐像や西大門勅額付属八天王像などなど普段はまずお目にかかることのない像も出陳され、快慶の作と言われている像の8割が集結しています。ここにこれだけの快慶仏が集まるという事がどれほど貴重なことかが分かった次第です。運慶との対比や慶派の中での快慶というのではなく、「快慶」というその人自身にスポットを当て、観る、知る展覧会です。

今回の展覧会は7つの章に分かれています。それは快慶の人生の中で人との出会いや世の中の出来事などの節目となった出来事を軸として快慶が造仏に残したサインとも関連づけて7つの章にわかれ、ほぼ時系列になっています。

快慶展のチラシ等をみいると「快慶には確証ある遺品が際立って多い」とあります。快慶は執拗なほどにサインを残しています。一般には足枘(仏像を台座に立てるために足裏に作られる突起部分)に銘(サイン)を残しています。その銘を見ればいつ頃作られたかが分かるのです。展覧会場にはこの銘の変遷解説パネルが展示されると伺いました。

仏師快慶文治5(1189)ボストン美術館所蔵《弥勒菩薩立像》像内納入品から銘が判明。

巧匠アン(梵字)阿弥陀仏建久3(1192)醍醐寺三宝院《弥勒菩薩坐像》~10年間ほど

東大寺の大勧進 に抜擢された俊乗房重源が、熱烈な阿弥陀信仰者で、自分を「南無阿弥陀仏」と名乗る様になり、自分と信仰を共有する人に「阿弥陀仏号」を与えるようになったことから、快慶も「アン(梵字)阿弥陀仏」を重源から与えられ、「名前を授かることで自分も阿弥陀仏と縁を結ぶ存在だと認識できた」とありました。これとっても大事なポイントです。
巧匠法橋快慶
建仁3(1203) 東大寺総供養の年に東大寺再興の業績が評価されて「法橋」という僧綱位(位階)に叙せられる。
巧匠法眼快慶承元2(1208)4(1210)の間に叙せられた。

快慶も運慶も生まれた年は分かっていません。仏師と言ってもこの時代の人は「僧侶」でした。快慶は、運慶の父の康慶の弟子の一人です。仏師の一派の図を参照ください)運慶には子供が6人もいて、一家で運慶工房を形成していましたが、快慶には子がいた形跡がないそうです。弟子が後継者となり、金工、截金・・・など仏像制作のプロ集団で工房を形成し、彼らは、阿弥陀信仰で結ばれていたのです。工房の発展と共に仏像制作の数も増え、基準となる形に習ってシステマティックに制作されたと考えられます。快慶のチェックが足枘に快慶の銘を入れるという事でした。快慶自身がどこまで手を入れたかは定かではありませんが、初期の作品は入念に快慶自身が作った像だそうです。仏像は注文制作が基本、施主の意向にそって造り上げており、表面に銘がないものも存在するそうです。



法華経(運慶願経)巻第二@真正極楽寺



快慶が生きた時代はどの様な時代だったのでしょう。彼らと同時代を生きたのが鴨長明です。『方丈記』に、大飢饉と大地震を記しています。平安から鎌倉への移行期、1180年には平重衡の南都焼打ちが起こりました。しかし翌1181年には後白河院の再建の詔書が出され、重源上人が大勧進となりました。この南都復興に運慶率いる慶派が活躍します。復興は急ピッチで進み、東大寺南大門金剛力士像も造立されています。阿形(口の開いている方)が快慶の作とされ、吽形は定覚、湛慶が作ったとされているようです。

快慶の出自や工房などその人物像に不明な点が多いとあります。

康慶の弟子の中では快慶はその技量だけでなく特別な存在であったと考えられるのでは?後白河院追善の造仏に無位の快慶が抜擢され、その後も後白河院の近臣であった信西(藤原道憲)とその一門の造仏の主な担い手となったことから、院や信西との関係が考えられ、俗にいう「落とし胤」?とまでは言及されていませんが、彼らと近しい関係があったことは推察できそうです。

最後にもう一つ大事なポイント:快慶と言えば「三尺阿弥陀如来立像」だそうです。三尺、90センチほどの阿弥陀さんです。法然や親鸞らによる浄土教が流行し、極楽へと導いてくれる「阿弥陀仏は快慶はんの」と当時の人々に受け入れられていたと考えられるそうです。快慶の端正で美しい三尺の阿弥陀仏は「安阿弥様」と呼ばれています。金泥塗りと玉眼でリアルさも追求した阿弥陀仏です。第7章では、「三尺阿弥陀如来立像」の変遷が一目で見られる贅沢さです。

展示位置にも工夫があります。お像は目線より高い位置に展示されています。快慶仏は、両目の見開きが小さめで目尻が切れ上がっています。仏像は本来信仰の対象で、拝む様に見上げるとちょうど視線が合うようになっているそうです。快慶は、早い段階でかたちを確立し、作風に大きな変化がなかった仏師だそうです。また左右対称に作られており、バランスがよく、端正で秀麗、格調高い像だと形容されています。

この展覧会では、像内納入品も多く展示され、またX線写真も展示されています。貴賤を問わず万と言う人が縁を結び、像の中に祈りを、願いを込めています。像は在世と天上界を結び、人々の願いを天上界へ伝えるものでした。そこも見落とされませんように。




 

 

 

 

運慶の力強い造形は、鎌倉幕府との結びつきを感じさせ、東国武士の好むところであったのかもしれません。快慶の造形は、絵画的と言われている通り、金泥を施した上に引かれた截金や鮮やかで繊細な彩色が本当に美しいので、単眼鏡や双眼鏡でじっくりご覧になって下さい。

展示作品についても、書くべきところですが、重要な展示作品についてはHPの主な出陳品解説を是非ご覧下さい。展覧会では、展示替えもありますのでご注意下さい。出陳品一覧

醍醐寺の≪弥勒菩薩座像≫が、4/25からお出ましになります。ボストン美術館蔵≪弥勒菩薩立像≫ 快慶作と分かる最初期の二仏が向かい合って展示されます。その場に立つことが出来るこの時期がお勧めです。
【開催概要】
会場:奈良国立博物館 東・西新館
会期:平成294月も8()64()
休館日:毎週月曜日 ※ただし5/1()は開館
・開館時間:午前930分~午後5
毎週金曜日・土曜日は午後7時まで※入館は閉館の30分前まで
・公式HP:

【公開講座】詳しくは⇒ ★☆★ 個人的に強くお勧め!
音声ガイドやキャプションだけでは分からない、時代背景や快慶その人、また作品について先生方のお話が聞ける貴重な機会だと思います。

【参考】ミュージアムショップで購入できます。
・展覧会図録
・『仏像の見方ハンドブック』池田書店 これは昔京博で買いました。
※あまりにも知らない自分に愕然として帰りにミュージアムショップで以下3冊を思わず購入しました。
・『月刊 大和路 ならら快慶 美と真理の探究者』
山口研究員の解説が本当に染み入る様に分かりやすかったです。
・『親と子のギャラリー ぶつぞう入門』私はここから出発です。
・『大和の仏たち―奈良博写真技師の眼―』仏さまの写真が美しい。


 

 

 

 

 

私がいままでに一番衝撃を受けた像は興福寺北円堂 無著世親立像

こちらも是非!!ごめんなさい快慶さん。



※関連イベントは、展覧会が始まったばかりですが、もう募集を締め切っています。(_ ;)

licoluise の紹介

ARTが好きなのか?美術館に行くのが好きなのかしら? 行きかけると拍車がかかって、前のめりになっている今日この頃かもしれません。 「知らない」「???」が増えるばかりです。
カテゴリー: +展覧会   タグ: ,   この投稿のパーマリンク
この記事を書いているのは
licoluise

licoluise

MUSEUMコンシェルジュになりたいが、ARTには全くの素人。山間部育ち、専攻は「東洋史」、ただただ美術館へお出かけするのが大好きな私が、阪神間の美術展、アート関連施設やアートイベントなどについてアートへの思いを綴ります。つたない文章ですが、読んでくださる方々が、お出かけしてみようかなと思ってくださるきっかけになればと思っております。

コメントは受け付けていません。