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私の中で点が線で繋がる『拝啓ルノワール先生』@あべのハルカス美術館

私の中で点が線で繋がる『拝啓ルノワール先生』@あべのハルカス美術館

あべのハルカス美術館で開催中の『拝啓ルノワール先生 ―梅原龍三郎が出会った西洋美術―』も会期末が近づいてきました。三菱一号美術館からの巡回展です。オープニングには、梅原龍三郎の曽孫で美術史家の嶋田華子さん、三菱一号美術館の高橋館長もご挨拶されました。

梅原龍三郎(以下、梅原)が、ルノアールに直接師事したことは有名ですが、私たちが目にする梅原の作品は円熟期の50代以降の作品が多く、どこがルノアールに・・・???と思わぬでもありません。裸婦の豊満な体つきぐらいでしょうかしら。色合いもフォーヴな感じを受けます。そんな疑問に答えを見つける展覧会です。

梅原は、1888年に京都の悉皆屋(呉服のプロデューサー的役割)に生まれ、裕福な大店で、幼き時より審美眼は自然と培われていたのは、尾形光琳、乾山兄弟と同じです。その後浅井忠が主催する聖護院洋画研究所で洋画を学びました。同期には後に梅原と画壇を担う安井曽太郎が居ました。浅井忠の死もあって1908年にフランスに渡ります。明治から大正かけて多くの日本の若者が渡仏していたのは、藤田嗣治展のブログでも書きました。しかしながら、「白樺」などを通して日本に「洋画」は紹介されていましたが、実際に目にする機会は決して多くなく、梅原も同郷の田中喜作から船中で借りた本でルノアールを初めて知ったそうで、これには驚きました。渡仏する以前に梅原が洋画を目にする機会があったのは、住友春翠の須磨の別邸であったらしい。これは、2015年秋に泉屋博古館で開催された『Baron 住友春翠-邸宅美術館の夢-』で私が目にしたかの作品たちではないかと。

20歳の梅原は無謀にも(と思われる)老巨匠ルノアールを南仏のアトリエに直接訪ねています。温厚だったルノワールは、温かく極東からやってきた若者を受け入れ、その後一緒にスケッチ旅行にも出かけています。三菱一号美術館高橋館長は、フォーヴィズムやキュビズムも誕生する20世紀初頭のルノワールはもはや過去の芸術家であったと図録に書いておられます。梅原にとって何故にルノワールだったのでしょう?

かの時期ルノワールはすでに68歳で、持病のリューマチも悪化していた頃だったでしょう。リュウーマチの痛さとも戦いながら明るい色彩を忘れず筆を手にするルノワールの姿を、梅原はその晩年にこそ思い出したのではないでしょうか。

日本で今も延々と続くルノワール人気は、梅原がもたらしたものと言っても過言ではないかもしれません。

梅原は、やっぱりボンボンなのか? 5年のフランス滞在をエンジョイし、特に芝居にのめり込み、帰国後は芝居の道に進むつもりでいたほどだそうです。ところが梅原は、「ルノワールに直接師事した画家」として鳴り物入りで迎え入れられます。世間は許さなかったのですね。安井と共に華々しい画壇デビューの様に思いますが、梅原も安井もご多分に漏れず、帰国後は自分の道を、画風を捜してスランプに陥ったそうです。そんな中、師ルノワールの死の知らせが届きます。梅原はすべてを売り払って(ルノワールから贈られた絵さえも)1920年に再度フランスを訪問し、弔問旅行とヨーロッパ各地を旅行し、何かを掴んで帰国しました。“吹っ切れた“という事でしょうか。

梅原の業績は、彼が生み出した作品だけではありません。そのコレクションは、多岐にわたり、それを日本の美術館のみならず、フランスの美術館へも寄贈しています。より多くの人に本物を観てほしいという思いは松方コレクションにみる松方幸次郎の思いや、邸宅美術館を建て、多くの画家を援助した住友春翠にも通じます。

梅原のコレクションのポンペイの壁画古代ギリシアのキュクラデス彫刻などは、昨年末から今年にかけて私は神戸で目にしたものでした。

師ルノワールの作品には特に思い入れもあり、わざわざフランスで古い額を買い求めてから美術館へ寄贈したそうです。今回の展示作品のルノワール《バラ》は、古い様式の額にした上、コレクションの古裂を入れ子に配しています。最初の渡仏時の帰国に際してルノワールから贈られた《薔薇》を、1920年の旅費工面の為に手放したことへの後悔の念、深い悲しみを償うかのように。

展覧会のチラシにもなっているルノワールと梅原の《パリスの審判》ルノワールの作品を目にして梅原が描いたと言われるが、全然似てないと言わないでほしい。梅原がこの《パリスの審判》を描いたのは最晩年の1978年の90歳の作品です。なんと明るく自由でエネルギーも感じます。90歳となっても忘れることのない若き日の自分の思いとルノワールへの思いが作品の中にから溢れてはいないだろうか。


【展覧会概要】
・会  場:あべのハルカス美術館
・あべのハルカス美術館HP:http://www.aham.jp/exhibition/future/renoirumehara/
・開催期間:2017124()326()
・開館時間:火~金 / 10002000 月土日祝 / 10001800
3月は会期末まで休館日なし

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ARTが好きなのか?美術館に行くのが好きなのかしら? 行きかけると拍車がかかって、前のめりになっている今日この頃かもしれません。 「知らない」「???」が増えるばかりです。
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MUSEUMコンシェルジュになりたいが、ARTには全くの素人。山間部育ち、専攻は「東洋史」、ただただ美術館へお出かけするのが大好きな私が、阪神間の美術展、アート関連施設やアートイベントなどについてアートへの思いを綴ります。つたない文章ですが、読んでくださる方々が、お出かけしてみようかなと思ってくださるきっかけになればと思っております。

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