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世界で一番有名なうさぎ“ピーターラビット”の展覧会です。

世界で一番有名なうさぎ“ピーターラビット”の展覧会です。

『ビアトリクス・ポター生誕150周年 ピーターラビット展』@グランフロント大阪 ナレッジキャピタルイベントラボ の内覧会に参加させて頂きました。取材陣は圧倒的に女性が多い内覧会でした。

「ピーターラビット」は、勿論知っていますが、どんなお話だったか?誰が書いたのかさえ知らず、イギリスの湖水地方がどんなところなのかもよく知らない、そんな私が参加させて頂きました。よって、作者のビアトリクス・ポターと「ピーターラビットの物語」については、この展覧会の図録から多く引用しました。

手のひらサイズの原画は、水彩で描かれ、絵本で見るよりもずっと繊細なタッチで、色も優しく温かい。一つ一つの作品に惹き込まれていきます。紙にインクで描かれた作品は、あまりにも精緻なので銅版画かと思うほどですし、水彩も彩色の豊かさに色鉛筆で描かれたのではないかと思うほどです。展示は、原画だけでなく、暗号で書かれた日記や、最初に自費出版された時の私家版や物語の草稿やスケッチなどが展示されています。紙に書かれたものがほとんどで、日本での巡回展が終われば今後50年は休ませることになると言われているそうです。

作者のビアトリクス・ポターは、19世紀半ばにロンドンの裕福な家庭で生まれ育ちました。当時の良家の子女は、学校へ通うのではなく、数人の家庭教師に様々なことを教わり、また外で他の子どもと遊ぶこともなかったそうです。遊び相手は、弟のバートラムと彼女の空想の中の創造物でした。動物が大好きで、本当は画家になりたかった父親の影響もあって絵を描くのが大好きな、多分夢見がちな少女だったのでしょうか。自分の周りの小動物を空想の中に登場させてお話はどんどん膨らんでいたことでしょう。それはシルバニアファミリーのうさぎたちを手に一人遊びに没頭する少女と似ているかもしれません。

ビアトリクスの父親の友人にラファエル前派のエヴァレット・ミレイ がいます。かの《オフィーリア》も目にしていたかもしれません。ミレイの写実的な植物も観ていたはずです。母親は厳格でしたが、父親は絵を描くのが好きだったことから、ビアトリクスも美術館へ出かける機会もあったようです、勿論お供も一緒ですが。大自然の大気までも写し取る画家、ターナーを敬愛していたそうです。また、19世紀のイギリスでは、博物学が流行し、ビアトリクスも解剖学的研究と視点から、対象物を細密に正確に描く技量を身に着けていました。登場する動物たちを大きくデフォルメせず、顔の表情が大きく変わるのではなく、角度や仕草やちょっとした目線で感情が伝わってきます。この点にも注目して観て頂きたい。

イギリス文学は、聖書とシェークスピアとマザーグースが基にあるそうです。ピーターラビットの最初にモデルとなったうさぎは、26歳の時にビアトリクスが飼ったうさぎで、「ピーター・パイパー」と名付けられました。その貴重な素描も展示されています。鉛筆で描かれたうさぎは毛一本一本丁寧に描きこまれて、ビアトリクスの技量が推し量れます。「ピーターラビット」のお話を、絵本に目を落としながら聴いてみると、掛詞があったりや韻をふんでいたりと耳にもここちよいのではないでしょうか。(音声ガイドでは、ディーン・フジオカさんの朗読もあります。)

ビアトリクス17歳の時の家庭教師アニー・カーターが、その後結婚し、5歳になったアニーの長男「ノエル」にビアトリクスが送った絵手紙が「ピーターラビットのお話」の始まりだそうです。病床にあったノエルへのお見舞い、励ましの絵手紙でした。後々これを絵本にして出版しようという事になりました、が、お嬢様の片手間な感じで出版してくれる所は見つからず、自費出版します。この時の私家版の挿絵が展示されています。私家版がフレデリック・ウォーレン社の目に留まり、色付きで出版されることになります。ここでビアトリクスは、子どもが読みやすいように小さい手のひらサイズにすることと、安価な値段設定と挿絵への色の妥協はしないというきっぱりとした条件を出したそうです。この点からもビアトリクスの絵本への思いが伝わってくるとても素敵なエピソードです。

24冊の「ピーターラビットの絵本」とよばれる絵本シリーズの舞台は、イングランド北西部の湖水地方の田園風景が舞台となっています。産業革命で「世界の工場」と呼ばれたイギリスのロンドンで育ったビアトリクスは、避暑に出かける湖水地方でどんなにか安らぎを覚えたことでしょう。この地のヒルトップの農場を購入し、そこに移り住み、絵本を作りながら、この地の自然と環境を守るためのナショナル・トラストにも熱心に取り組み、湖水地方の土地を買い続けました。死に際しては、彼女が所有する湖水地方の土地すべてを、彼女の写真や水彩とともにナショナル・トラストに遺贈しています。この時代湖水地方に移り住んだのは、ビアトリクスだけでなく、詩人のワーズワースや(美術)評論家のジョン・ラスキンなどの多くの知識人が居ました。ビアトリクス・ポターの生きた時代の背景に、産業革命とアーツアンドクラフト運動やラファエル前派の存在もあったことにも気づかされました。展示場の最後にヒルトップにある三角屋根が再現されています。その部屋の壁は、ウイリアム・モリスの壁紙でした。

ビアトリクスは、ウォーレン社とともに多くの関連商品を開発し、特許を取って、販売もした、ビジネスウーマンでもありました。

昨年展覧会が開催された印象派の画家メアリ・カサットも同時代に生きた女性です。一人で外も出歩けない時代に、確固たる意志を持ち、自立した一個人として生きた彼女たちです。

お話も可愛いですが、なんと言っても登場する動物たちの仕草がどれも可愛い。「ピーターラビットのお話」は、この可愛いキャラクーたちに支えられいつまでも色あせず、読み継がれていきそうです。

年長さんぐらいなら展示内容は十分楽しめますが、原画はデリケートで、サイズも小さく、展示が高いかもしれません。ママたちの方が虜になることは間違いありません。ミュージアムショップは、可愛いものばかりであれもこれもと食指が伸びてしましそうです。ご注意ください(())

図録の装丁も素敵で、絵本の様になっています。

【開催概要】
・会  期:2017211日(土)~ 42日(日)※但し、219日は休館
・開館時間:10:00 18:00(最終入館は、17:30まで)
※このHPにも、可愛いキャラクターが登場し、とっても可愛いので是非チェックしてください。
【参考】
・大東文化大学 ビアトリクス・ポター資料館:http://www.daito.ac.jp/potter/
DVD《ミス・ポター》ビアトリクス・ポターの人生を知るヒントになります。

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ARTが好きなのか?美術館に行くのが好きなのかしら? 行きかけると拍車がかかって、前のめりになっている今日この頃かもしれません。 「知らない」「???」が増えるばかりです。
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この記事を書いているのは
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MUSEUMコンシェルジュになりたいが、ARTには全くの素人。山間部育ち、専攻は「東洋史」、ただただ美術館へお出かけするのが大好きな私が、阪神間の美術展、アート関連施設やアートイベントなどについてアートへの思いを綴ります。つたない文章ですが、読んでくださる方々が、お出かけしてみようかなと思ってくださるきっかけになればと思っております。

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