ライターブログトップへ

『ポンペイの壁画展』@兵庫県立美術館 ブロガー内覧会に参加してきました。

『ポンペイの壁画展』@兵庫県立美術館 ブロガー内覧会に参加してきました。

昨年の“モランディ“展に続き、兵庫県立美術館で開かれた「ブロガー向け内覧会」に参加させて頂きました。関西ではまだまだ実施する美術館博物館がなく、1年ぶりとなります。

私がブログを掲載して頂くきっかけとなったのが1年前のこの内覧会です。そして1年たってもこのブログのview数を超えるブログは書けていません。

今回も既に会期早々10月に観に行っておりました。そうして感想は・・・そうなのですピン!!と胸に届かなかったのです。そこでやはりもう一度担当学芸員さんのお話も拝聴して見直す機会を与えて頂いた感じで参加させて頂きました。

初めに担当学芸員の鈴木慈子さんが、穏やかな語り口で分かり易くスライドを使って解説してくださいました。

ポンペイの遺跡の事を知らない人はない、幼い頃に社会でも習い、そしてこれまでもポンペイに関する特別展は何度も開催されてきたようです。ポンペイは、南イタリアに位置し、ナポリ湾に面して風光明媚な地で、気候も温暖な地であったことでしょう。街の北側にあるヴェスヴィオ火山が噴火したのは、西暦79年、今から1940年近くも前の事なのです。ローマ帝国は帝政の最盛期つまり「パクスロマーナ」の時代です。かのネロ皇帝のキリスト教迫害と五賢帝時代の間で、80年にはかの「コロッセウム」が完成した時代でした。ポンペイの街は、火山灰と火砕流に埋もれ、瞬にして消え去ってしまったのでしょう。火山灰の中で永い眠りについていました。しかしながら、このヴェスヴィオ 火山の噴火の前に当地では地震があり、西暦79年はその復興途中であったとも言われているそうです。1748年から発掘が始まり、発掘されたものの素晴らしさに驚いた当時、古代ブームが起き、アートの分野でも享楽的なロココのほわっとした様式からまさに古代ギリシア彫刻の様な荘厳でカチッとした「新古典主義」が誕生します。

ポンペイの壁画はフレスコ画と言われるもので“フレスコ”とは“フレッシュ”、つまり漆喰が乾ききるまでに水で溶いた顔料で描いたものです。乾いていく過程で顔料が定着します。湿気に弱く、それが弱点ですが、不幸中の幸いか、降り積もった火山灰が乾燥剤の役割を果たし、当時の姿そのままを現代へと伝えることになりました。

今回は、「壁画」に焦点を当てた展覧会となっており、描かれた主題ごとに4つの章に分けて紹介されていました。壁画の様式や各章の見どころなどについては公式HPに詳しいのでそちらをご覧ください。⇒コチラ

最初に目に飛び込んで来るのは、やはり「色彩」でしょう。盗掘者によって一度はスイスへ持ち出された《赤い建築を描いた壁面装飾》ポンペイの壁画には「赤」(といっても様々な赤であるが)が多く使われており、「ポンペイレッド」というそうです。この時代にすでに独自の遠近法でしっかりと描かれ、壁面に奥行きを感じさせる。壁面装飾と言っても全体像や大きなモチーフに目が行きがちですが、壁画の細部までしっかりと目をやって、繊細な表現も見落とさないようにしたい。

出土地が「トッレ・デル・グレコ、ソーラ地区の海浜別荘」の壁面及び天井装飾は“エジプト青“が使われています。海辺を意識しての「水色」なのでしょうか。この青い顔料は、エジプトのアレキサンドリア産の高価な顔料だそうです。フェルメールの高価なラピスラズリのフェルメールブルー、浮世絵のベロ藍、東山魁夷の青といつも時代もブルーに魅せられる人たちがいるものだと思いました。

「エジプト青」の顔料がこんもり盛られたまま、他の顔料と一緒に展示され、そのお隣には壁画制作の道具も展示されていました。こんなものもちゃんとそのまま発掘されたのですね。

誰もが持つ疑問「本当にこんに鮮やかな色だったのでしょうか?」鈴木学芸員曰く、「発掘者が一番初めに目にした色が一番鮮やか、つまりもっと鮮やかだったと考えられます。」火砕流などの熱の作用で色の変化が生じたと考えられる顔料もあるそうですが、18世紀の半ばからの発掘が始まったため、保存技術も今ほど発達していなかったために褪色してきたと考えられています。

豪華な別荘は海辺だけでなく、葡萄酒作りが盛んな農園の中にも別荘があり、こちらは大がかりにも食堂の壁が立体再現されています。《カルミアーノ農園別荘、トリクリニウム》解説の全体図からしてとても大きな別荘です。赤い壁は緑の葡萄の葉に映えたことでしょう。

食堂の入口部分を除いては左右は壁になっていますが、展示を支える壁の強度を最優先に考えて角度をつけての展示は残念されたそうです。本物の壁画の展示ですので、その総重量たるや、大変なことになっているはず。学芸員さんも恐ろしくて計算できないまま今日に至っているという事です。つまり、これが展示するにあたり一番心配なところ、苦労された(継続中)点なのです。イタリア側からの確認事項でも支えとなる壁の強度が一番重要な点だったそうです。他の巡回地では仮設の壁を使った所もあるそうですが、兵庫県美はすべて美術館の元々の壁面を利用しての展示となっています。美術館の壁の構造と強度について何度も何度もイタリア側に説明されたという事でした。そこに工夫を凝らして再現されていることにも注目してください。

西洋の文化の基本には、「キリスト教」と「古代ギリシア・ローマ」があります。そしてこの理解が私にとっては大きな障壁となっています。 帝政ローマの時代の人にとっても憧れは、古代ギリシア文化、神話をどのように壁画に表現するかが腕の見せ所であったでしょう。皇帝崇拝の場とみられる「アウグステウム」の壁面の再現展示、これは「日伊国交樹立150周年」事業の1つだからこそ実現した門外不出の貴重な大壁画だそうですのでじっくり観ておきたい。

壁画は、専門職人集団が分業で行ったと考えられているそうです。《選挙広告の書かれた壁面》のフォントは選挙用のフォントで、これを専門に書く職人がいただろうという事でした。「アウグステウム」の壁面は、高い技術を持った職人集団の工房製作だったと考えられています。ポンペイ発掘に先立つエルコラーノ「アウグステウム」の発掘は、大変有名になり、版画となってヨーロッパに広まり、古代ブームを引き起こすきっかけとなりました。

会場を一回りして、これが西暦79年に実在した?と驚きます。それでその現実味が前回来た時には感じられなかったために「うん?」という印象を持ったのではないかと自己分析しました。1940年ほど前に 、高度な文化と豊かな暮らしがそこにあったことが伝わってきました。

ポンペイは18世紀の半ばから発掘されており、当初は、壁画の部分だけを切り取って保存していたために額に入っています。額に入った発掘品もその発掘の歴史も物語っています。イタリアは文化財の宝庫なだけに、保存修復技術がとても進んでいるそうで、日本の高松塚古墳壁画などの保存修復に際してもアドバイスを受けたそうです。残念ながらキトラも高松塚も古墳を開けた途端に黴にやられてしまって、切り取られて保存されることになりました。兵庫県立美術館で何故古代ローマの展覧会?の問いには、ポンペイの壁画が近代絵画に与えた影響を考えてほしいという事でした。担当学芸員の鈴木さん自身ご専門は近代絵画だそうです18世紀半ばの発掘と古代ブームと新古典主義を考えれば納得のいくところかもしれません。ルノアールやピカソもポンペイを訪れて芸術家として衝撃を受けています。

今回は、壁画にフォーカスした展示でしたので、やはりポンペイの遺跡全体像は現地へ足を運ばなければ・・・というところでしょう。CGで遺跡全体を復元したものもありそうで、観てみたいものだと思いました。

ブロガー内覧会、今回は作品自体の写真撮影がOKでしたので、参加の皆さん、バチバチ作品撮影に必死感が漂っておりました。私自身、内覧会等に出かけると写真を撮る方が優先されて、カメラを通してしか作品を観ていなかった・・・なんてことも無きにしも非ず。改めて写真や図録を見直してみると「あらっ?」こんなのあったかしらと気付くことしばしばです。



お二人お気に入りの《天球儀》



私、日々がやっとやっとで漫画まで手が伸びず読んだことがないのですが『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリさんは存じております、日曜美術館にも登場されているのを拝見しています。今更ながら、「ヤマザキマリさん×とり・みき」『プリニウス』スペシャルトークは聴講したかったです。プリニウスは、世界史用語辞典によれば「『博物誌』を著した博物学者で、ヴェスヴィオ火山噴火に際し、人命救助と観察活動中に殉職した」とありました。ならば漫画『プリニウス』も読まねば。

展示会場最後は《フェニックスと2羽のクジャク》が未来の復興を願っての様にお見送りでした。展覧会ではお子様向けの楽しいワークシートが用意されていたり、関連イベントも盛りだくさんなので、是非お子様と一緒にお出かけください。

12/2からは神戸の冬の風物詩「ルミナリエ」も始まりますね。
【展覧会概要】
・会期:20161015()1225()
・休館日:月曜日
・開館時間:午前10時~午後6時(金・土曜日は午後8時まで)
・入場は閉館30分前まで。

お子ちゃまにお薦め【関連イベント】
①《ジャンルーカ・ディ・マッテーオ 人形劇「プルチネッラ」》
・日時:123日(日)午前11時から(45)
・場所:兵庫県立美術館 アトリエ1(定員100)
・入場無料
・お問い合わせ:078-262-0901
白い服に黒い仮面の「プルチネッラ」が登場する愉快なお話の人形劇みたいです。
《おやこ解説会》
・日時:1210()午後130分~(30)
・場所:レクチャールーム
要事前申込・参加無料
お問い合わせ:
こどもイベント係 Tel078-262-0908

【学芸員による解説会】
1217() 午後4時~(45) @レクチャールーム 聴講無料

【参考】
・インターネットミュージアムHP(私の拙い「写真では伝わらない所はコチラ)
日本で一番有名なアートブロガーなのではないか?の二代目 青い日記帳」Takさんの
「ポンペイの壁画展」ブログです。
たまには辛口の批評も書いて頂きたいと私的には感じています。

licoluise の紹介

ARTが好きなのか?美術館に行くのが好きなのかしら? 行きかけると拍車がかかって、前のめりになっている今日この頃かもしれません。 「知らない」「???」が増えるばかりです。
カテゴリー: +キッズ, +展覧会   パーマリンク
この記事を書いているのは
licoluise

licoluise

MUSEUMコンシェルジュになりたいが、ARTには全くの素人。山間部育ち、専攻は「東洋史」、ただただ美術館へお出かけするのが大好きな私が、阪神間の美術展、アート関連施設やアートイベントなどについてアートへの思いを綴ります。つたない文章ですが、読んでくださる方々が、お出かけしてみようかなと思ってくださるきっかけになればと思っております。

コメントは受け付けていません。